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重い奨学金返済の実態~深刻化する滞納問題の陰に、支援機構の対応不備も

●高卒と大卒の生涯賃金差

 転職サイトDODAの13年度平均年収調査によれば、20代の平均年収は349万円。K氏のボーナス支給なしの年収より、少し多いくらいだ。平均的な年収にもかかわらず、ボーナスでしか貯金する機会がない生活は、楽とはいえないだろう。もちろん、もっと安い物件に引っ越したり、食費や趣味にかけるお金をもっと少なくすれば、多少は生活が楽になるのだから、苦しい生活とはいえない。

 労働政策研究・研修機構の調査によれば、社員数100~999人規模の会社における生涯賃金は、高校卒が約2億円、大学卒は約2億4000万円だ(共に60歳まで働き、退職金を考慮しない)。その差は4000万円だから、平均値だけで比べてしまえば、奨学金を借りてでも大学を卒業したほうが稼げる金額は高くなる。ただし、平均値=中央値とはならず、この金額に満たない人は相当数いるはずだし、定年まで働けるとも限らない。

●日本学生支援機構の対応にも問題あり

 奨学金の報道を見ていると、日本学生支援機構が督促を強化している報道ばかりが目立つ。一方で、奨学金をこれから申し込もうとしている人に対する対応はイマイチだ。

 例えば、奨学金の申し込みパンフレットには、基準となる父母の年収や、奨学金の返還の月額がいくらとなるかの試算額は示されており、返還の義務がある旨の記載がある。申し込み説明会などでも、返還についての啓蒙をしていることだろう。しかし、学校を卒業した後、返還していくには、どのくらいの収入が必要かというモデルケースの記載が抜けている。奨学金を申し込む学生にとって、大学を卒業して社会に出た後、自分の家計で返していけるかどうかを判断する材料も提供する必要があるのではないか。
 
 また、返還の上限年数が20年というのも、返済するにはつらい人も多いだろう。現在では、「所得連動返還型無利子奨学金」という制度が整備されており、給与所得者で年収が300万円を超えるまでは返還を猶予してもらうことができる。しかし、年収が300万円以上ある人でも、K氏のように多く借りていた場合は、やはり返還がきついだろう。
 
 貸与金額に比例した収入による返還猶予や、支出などは考慮されていない。そんな制度がなくても、返還上限が30年に延びれば、単純計算で月額の負担は3分の2に減らせるのだ。

 督促の強化や、返還猶予の制度をつくって、少しでも返還率が向上するように動いている日本学生支援機構は、借りようとしている学生に対して、年収と返還金額を計算したモデルケースを作成したり、より柔軟な返還猶予制度を作って、返還しやすくしてもらいたい。
 
「借りたものを返す」のは当たり前ということを、学生にもっと周知しなければならないのに、その環境づくりができていないのだ。
(文=久我吉史)

BusinessJournal編集部

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