また、「中高年の再就職市場がより大きくなるという前提の上で賛成する」「とにかく、若い人に仕事の門を広げて社会に貢献してほしい」と労働市場の活性化に期待する意見も目につく。ほかに「これからは実力社会として発展していくべき」など、解雇規制緩和を時代の風潮として受け止める人もいるようだ。
(2)解雇規制の緩和に反対(48.4%)
反対派にはやはり、働く人が不当な扱いを受けないかを心配する声が多い。「企業による人材の使い捨てが増える」「企業の無理が通りやすくなる」「会社にポイ捨てされそう」といった意見はその代表だ。さらに、解雇後の不安も大きく、「再就職が難しい現状で解雇規制の緩和をしたら、失業者が増加してしまう」「解雇されても就職しやすい環境がないと問題」といった失業者への対応が不十分との声もある。
また、「ますます格差が進み、生活弱者がさらに増えると思うから」「経営側だけが一方的に有利になって、搾取が進み格差の拡大が進行する」など、失業者の増加や格差の拡大を危惧する人もいる。
(3)その他(27.3%)
賛成でも反対でもない人にもっとも多かったのが、「わからない」という声だった。解雇規制を緩和することで「何が利点なのかわからない」「規制緩和が競争力向上などにつながる根拠がわからない」など、議論そのものを理解できていない意見が多い。会社で働く人にとっては大きな問題だが、それ以外の人にはなぜ解雇規制緩和が検討されるのか、その目的がわかりにくいようだ。
また、「社員がリストラされやすくなると思うので反対の気持ちもあるが、労働者の権利ばかりを守っていては会社の発展はないので、どちらかは決められない」など、会社と従業員双方の立場に立った回答も見られた。
解雇規制緩和は働く人の生活に大きく関わる切実な問題だけに、反対派が賛成派を上回ったこの結果は当然といえるのかもしれない。ただし、正社員か非正規雇用かではなく、それぞれが自分に合った働き方を見つけるためにはどのような制度が望ましいか、というのは必要な議論。そのためには、不当解雇の防止やセーフティーネットの拡充を進めつつ、「新しい雇用のあり方」全体の問題として国民的議論が深まることが望ましいといえよう。
(文=松原麻依/清談社)