潤沢な補助金に加え、競争的な資金も理研がごっそりと持っていくようになった結果、地方大学などに競争的資金が回りにくくなっている。そして、理研の金満ぶりは近年さらに加速している。所管官庁である文部科学省(旧科学技術庁)が原子力関連に予算を回しづらくなった分、理研にその金が流れているという。その結果、予算消化のために何百万円もする海外製の高級家具を調度品として買うようなこともしている。
ただ、野依理事長だけが悪いわけではない。権力欲が強いといわれる野依氏はうまく神輿に担がれている面もあるという。
「野依氏は一流の研究者だが、一流の経営者ではない。しかし、自分は一流の経営者だと思っている。そこを天下り官僚と取り巻きにうまくつけ込まれて、利用されているだけ。今、理研内ではよく『野依さんの指示だから』といったような言い方がされますが、実際には野依氏は指示をしていません」(理研関係者)
●強まる天下り官僚の支配
こうした背景には、理研を独立行政法人化したことで、文部科学省の支配力がよりいっそう強まったことも影響している。野依氏を文科省出身の天下り官僚が操り、役所に逆らわない研究機関化した。その結果、理事がどのような根拠で選ばれているかももわからず、天下り官僚とその取り巻きたちがすべて「談合」で決めていく組織となった。
今回のSTAP細胞論文問題でも、小保方氏は早く公式の場で説明する意向があったが、理研側がそれを止めさせたという。
また、理研は「小保方氏は論文撤回の意向がある」と説明していたが、小保方氏はそれを会見で否定した。役人根性丸出しで、理研という組織に火の粉がかかるのを恐れて、小保方氏に撤回を勧めたのではないか。
加えて、補助金面などでさらに優遇される「特定国立研究開発法人」化を狙ってその実績づくりのために、STAP細胞の発見を華々しく打ち上げたものの、事態が急変すると組織としての管理の問題には頬被りして、小保方氏一人に責任に押し付けようとしている。これもいかにも役人のやりそうな手口だ。
今回の論文問題は小保方氏個人だけの問題ではない。理研の組織風土が大きく関与していると見たほうがいい。
(文=井上久男/ジャーナリスト)