2013年12月18日に富山、奈良、神奈川の3県と民間企業数社が連携し、「一般社団法人・漢方産業化推進研究会」を設立すると表明。現在、漢方の市場規模は医薬品に1400億円、健康食品などに2兆6000億円の計2兆7400億円。これを10年計画で10兆円規模に拡大させるのが同研究会の目標だという。
漢方薬は必ず薬剤師に相談してから購入
では実際のエンドユーザーは、どのように漢方と付き合っているのだろうか? 奈良県奈良市にある創業1184年の漢方薬の老舗、菊岡漢方薬の菊岡泰政氏は最近の傾向を次のように語る。
「近年では、目や耳に対するご相談が増えています。特に目の疲れ、かすみのご相談は多く、パソコンやスマートフォンの見すぎなど、ブルーライトの影響が考えられます。さらに、30代後半から肝臓や腎臓も弱くなるので、そこから視力に影響が出てくる場合もあります。例えば、肝臓の働きが弱ると、体全体の解毒力が低下します。その場合には、『洗肝明目湯(せんかんめいもくとう)』という薬を飲めば肝臓の機能回復に役立ちます。また、年齢とともに泌尿器が弱り、そこから視力に影響を与えている場合は、『滋腎明目湯(じじんめいもくとう)』という薬が効果的です。ほかにも、体力を増進したい人や虚弱体質の人には、『補中益気湯(ほちゅうえっきとう)』などがお勧めです。ちなみに、当店のような小売店で購入した場合、既製品の薬にかかる1日分の目安は300~500円くらいです」
注意すべきは、漢方薬は人によって処方が千差万別なので、似たような症状でも年齢、性別、体格、環境によって服用するものが違うという点だ。漢方薬はドラッグストアなどでも気軽に手に入れられるようになったが、効能だけで判断するのではなく、必ず薬剤師などに相談してから購入するべきだという。余談だがED(勃起不全)改善に効果のある漢方薬も中高年男性から人気を集めているそうだ。
原材料は8割以上が中国産
前出の漢方産業化推進研究会では、企業・メーカーと共に漢方についての研究や市場調査を中心に活動の幅を広げているという。そこで同研究会の事務局となっている三菱総合研究所の陳莉玲氏に話を聞いた。
「今、世界中から漢方は注目されています。そのため、世界保健機関(WHO)から国際標準を出してほしいと打診されています。しかし、『我が国が元祖だ』とする中国からのアピールが強く、日中間の調整がまだ進んでいないため、なかなか国際基準の制定には至っていないのが現状です。また日本では、漢方薬の原材料の82%は中国産の植物を使用しており、自国での生産が追いついていないことも今後の課題です。農家の方々と話し合い、耕作放棄地などを開墾していく必要があると考えています」
また、原材料の多くを中国産に頼ることには、農薬の問題をはじめ、品質管理など安全面についても心配は否めない。
3月5日に厚生労働省から新たな薬価改定の告示が出され、4月1日から薬価は引き下げられた。しかし日中関係、税関、輸入の問題で生薬の一部価格が上がり、漢方薬の場合、「薬価自体は下がるが原材料費は上がる」という逆ざや状態となっている。国内生産の土壌を育むことについて、真剣に取り組み始める必要がありそうだ。
(文=東賢志/A4studio)