全国地域航空システム推進協議会によると、2013年度に地域航空事業者が運航した離島航空路線は47あり、利用者数は約167万人。政府も離島航空路線の重要性を認識しており、運航費補助金、機体補助金、着陸料等の軽減、航空機燃料税の軽減、固定資産税の軽減など、さまざまな支援を行っている。しかし、路線での高速船との競合、燃料価格の高騰に伴う運賃の値上がり、少子高齢化や都市部への人口流出による離島人口の減少、交通需要の減少などにより利用者が減少し、事業者の経営は悪化している。
離島の住民も、料金が安いこともあって飛行機よりも高速船を利用する人が多い。海が荒れていて船が欠航となる場合でも飛行機は運行できるケースもあるなど、航空路の必要性は認められているものの、自動車でいうところの“船は一般道、飛行機は高速道”のような使い分けをしており、必要に迫られない限りは船での移動を選ぶ状況だ。
●進まない経営改革
地方航空路線の苦境には、行政の問題もある。日本の航空行政では、航空系事業と非航空系事業が分離されている。航空系事業とは、滑走路、誘導路、駐機場などの基本施設の管理を指し、非航空系事業とは、空港ターミナルビルや駐車場などの運営を指す。
国内の多くの空港では、航空系事業は国や地方自治体が担い、非航空系事業は第三セクターや民間企業が担っている。それに比べ諸外国では、両事業が一体となっているため、収入を空港ターミナルビルから得る一方、着陸料を引き下げ、新たな航空便を誘致するといった活動を行っている。
こうした状況に行政も重い腰を上げ、13年に「民間の能力を活用した国管理空港等の運営等に関する法律」が成立した。これにより、「空港の土地などの所有権は国(もしくは地方自治体)が保持したまま、空港の運営権を民間事業者に売却し、両者は事業契約を結ぶことで、民間事業者に空港経営を委託する。空港を利用する航空会社などは、空港を運営する民間事業者に対して着陸料など利用料金を支払う」ことが可能になった。
しかし、この法律が成立しても地方航空路線事業が好転しているわけではない。空港ターミナルビルの収益を原資に着陸料等を引き下げ、新たな航空路線を誘致して空港の活性化を図ろうにも、着陸料などは空港の最大の収益源であり、簡単に引き下げができないのが現状だ。
また、地方空港、地方航空路線事業者の多くは、地元の事業団体とタイアップをして観光客の誘致を進めようとしているが、それぞれの地元団体にしてみれば、どの交通手段であっても観光客が来てくれればよく、航空にこだわる理由がなくタイアップに積極的でない側面もある。
このように、経営改善策を模索しているものの決め手に欠き、改革は進んでいない。なんらかの打開策を見出さない限り、地方航空路線が衰退していく道から逃れることは難しいだろう。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)