内定を取り消されたのは東洋英和女学院大学4年生の笹崎里菜さん。笹崎さんは2015年4月に同社へ入社する「採用内定」を得てすでに研修を重ねていた今年3月、銀座クラブでのアルバイト歴を人事担当者に明かし、「そういうものは大丈夫なのでしょうか」と相談。担当者は1度は「大丈夫だとわかったので、人事としてもあなたを守ります」と回答したものの、その後、「週刊現代」(講談社/11月22日号)によれば同社は次のように笹崎さんに対し内定取り消しを伝えたという。
「残念だが笹崎を採用することは日テレとしてはできない。日テレとして傷がついたアナウンサーを使える番組はないという判断となった」
「内定辞退という方法もある。取り消しよりは騒がれずにすむ」
「(昨年9月の同社主催セミナーで提出した『自己紹介シート』にクラブでのアルバイト歴を記載しなかったことについて、内定時に取り交わした)誓約書の項目4『貴社への申告に虚偽の内容があった場合』に該当する」
さらに5月2日付で同社人事局長が笹崎さんへ送った次の書簡内容が訴訟資料から明らかとなり、「職業差別ではないか」などの批判が同社に集まっている。
「アナウンサーには、極めて高度の清廉性が求められます。他方で、銀座のクラブでホステスとして就労していた貴殿の経歴は、アナウンサーに求められる清廉性に相応しくないものであり、仮にこの事実が公になれば、アナウンサーとしての業務付与や配置に著しい支障が生ずることは明らかです」
●日本テレビの対応の法的問題点
すでに笹崎さんは10月、同社の行為を不服として、自身が来年同社に入社する権利があることを確認する訴訟を提起。11月14日には第1回口頭弁論が開かれたが、そもそも一度出された内定の取り消しが法的に認められることはあるのだろうか? AVANCE LEGAL GROUP LPC 執行役員の山岸純弁護士は、次のように解説する。
「内定とは、内定の時に約束した事を守れなかった場合には採用を取り消す(解約)ことができるという、採用側の解約権を留保した労働契約を意味します(最高裁昭和54年7月20日判決など)。今回、日本テレビは女子大生が過去に銀座のクラブでホステス経験があったことを理由に内定を取り消したとのことですが、女子大生は内定時に『過去に銀座のクラブでホステスを経験したことはありません』といった約束はしていないでしょうから、ストレートに『ホステス経験』を理由に取り消すことはできないとも考えられます。