日本にとどまらず、積極的に世界を相手に勝負を挑むことは称賛に値し、今後も海外に挑戦する人たちが増えていくとの見方も多い。だが、現実を見てみれば海外起業は曲がり角にきている感は否めない。
直接的な海外進出が「ある」と回答した企業のうちで、「撤退または撤退の検討あり」との回答は635社(39.4%)と、約4割に及んだリサーチ結果もある(2014年、帝国データバンクが実施した海外進出に関する調査より)。
現在の傾向としては、ベンチャー企業や個人での起業の場合、成功と失敗の二極化がかなりはっきりと出始めている。
ベンチャー企業は、初めのうち低調であっても年数を重ねて成長していければ、将来の成功が見込める可能性もあるだろう。だが昨今のビジネスシーンでは、早くに結果を出さないと生き残れなくなっている。その傾向は、非製造業、特にサービス業などで顕著である。
●内憂外患の海外起業
日本人観光客を相手にする旅行会社や観光業の場合には、どうしても日本の景気に左右されやすくなる。一方で、現地の人や企業を相手にしたローカルビジネスがうまくいくともいえない。現地通貨で稼ぐより、やや弱くなった「円」のほうが効率的かつ安定しているからだ。また、ローカルビジネスで稼ぐ場合には、人件費を抑えるために地元の人を採用するが、そこでのトラブルも数多く起きている。
「同業者で、経営者が2週間ほど日本に帰国している間に店を乗っ取られたケースがあるので、安心して帰国できないんです」
ミャンマーで美容院を経営している人物は、このように現地人採用のリスクについて語る。店や会社の乗っ取りは珍しいことではなく、同様の被害はインド、タイ、マレーシアなど、日本のベンチャー企業が進出している各国で起こっている。
乗っ取りの背景には、外国人が単独で起業できずに、現地人のビジネスパートナーがいないといけないという法律や制度があるからだ。
ビジネスには成功も失敗もつきものだとの厳しい意見もあるだろうが、ただでさえ言葉や文化の壁がある海外起業の場合には、少しでも障害を少なくしたいのが本音だろう。ところが、同じような苦労をしている日本人同士でも足の引っ張り合いが起きているというのだ。