近年、日本の暴力団関係者が多く東南アジアに進出しているという。以前は、カンボジアを拠点としたグループが不動産投資詐欺を行うケースが多かったが、今ではタイなどに進出、現地で日本食レストランや日本人向け風俗店を経営しているようだ。
「在タイの日本人は、現地の日本国大使館に在留届を出している数だけで約4万人ですが、実際は10万人以上といわれています。首都のバンコクは、日系企業、特に製造業のアジアにおける一大拠点なので、出張者の往来も激しく、人気観光地なので旅行者も多く訪れます。そのため、日本人向けのサービス業が非常に充実しており、日本語だけで暮らせる環境が整っています。その一角が風俗です」(バンコク在住の日本人記者)
有名なのは、昔から日本人向けの歓楽街が形成されているタニヤ通りと、日本人居住の高級マンションが多く建つスクンビット地区だ。当然、日本人が経営するカラオケ店やマッサージ型風俗店などがひしめいており、暴力団関連の店も多数存在している。
「彼らは、暴力団のフロント企業のような存在です。わざわざタイで風俗店を開くのは、マネーロンダリングが目的といわれています」(同)
日本で薬物売買などを行い、そこで稼いだお金をタイに持ち込み、風俗店を運営する。そして、そこで得た利益をまた日本に還流させていく、という仕組みだ。
風俗店に限らず、日本人向け歓楽街で居酒屋やレストランなどを経営して成功する例も出てきている。アベノミクスをうたう一方で、景気回復の実態が見えてこない日本より、タイのほうが経済的にははるかに元気だ。歓楽街にはタイ人も多く訪れる上、タイの中間層は日本の中間層よりお金を使う傾向にある。暴力団だけでなく、一般の飲食チェーンも「日本よりタイの中間層を相手にしたほうが、客単価が高い」と現地に進出している時代だ。
オーナーとの契約をめぐって一触即発
先日、そんなタニヤ通りで事件が起きた。暴力団関係者が経営する居酒屋が、入居しているビルの契約更新の際、タイ人のオーナーから家賃の倍増を求められたのだ。店子が儲かっていると見ると、タイではそういった交渉も少なくない。タイでは、不動産を所有している側の力が圧倒的に強いのだ。そのオーナーは、相手が筋の悪い連中だと察していたようだが、まさか暴力団関係者だとは思っていなかっただろう。
「店の従業員たちは、オーナーに銃を突きつけて『今まで通りの契約にしろ』と脅迫していました。タイでは、銃器が簡単に手に入るのです」(タニヤ通りの飲食店経営者)
しかし、オーナーもタニヤ通りで長年にわたって水商売の日本人を相手にしてきた海千山千の存在だ。一度は退散したものの、数日後に再び現れて応戦したという。