かつて日本にもあった?外国技術を“マネ”するという国家戦略
「じゃかあしいい! これが平成の開国やぁ!! テメーらも、別のシマに出てって闘ってこんかい!」
と、まあTPPの農業分野の議論は、概ねこんな感じにまとまるのかと思います。
●農業と知財
TPPというと、「農業分野の貿易自由化」の話ばかりのように思えますが、実際にはTPP交渉には24分野あり、21の作業分科会が設けられています【註1】。
農業分野については、すでに多くの方が述べられていますので、今回は、この分科会の一つ、知財保護、海賊版の取り締まりに関する「知的財産」について、考えてみたいと思いますが、その前に、前述した「いつだって、農業分野ばかりが、誰かの何かの犠牲になってきた」に対して、少しばかり考察をしてみたいと思います。
まず、知財分野と農業分野は、その歴史において、非常に似ているというお話からです。
明治政府が誕生したばかりの日本(1868年)は、当然のことですが技術分野において、超後進国でした。加えて、関税自主権のない不平等条約によって、日本は当時の最先端技術の製品を「購入」だけさせられて、「自主開発」できるような技術力は片鱗すらもなかったわけです。
それでも近代国家を目指す我が国は、絶望的に少ない国家予算の中で、外国から機関車を買い、戦艦を買い、銃を買いまくり続けました。当時の海外の帝国主義国家にとっては、日本はこれ以上もない最高の狩場。おまけに、関税率の決定権すら自分たちで握っているのですから、笑いが止まりません。当時の日本国政府は、関税で外国の製品の流入を防いで、国内で製造産業を育成することは難しかっただろうと思います。
●イタかった専売特許条例
そんな中、明治政府も知財を守る法律の制定にかかります。明治4年に一度施行されたのですが1年で中止になり、その後、高橋是清が専売特許所長となって、1885年(明治18年)に専売特許条例【註2】【註3】が制定されます。
その目的はーーはっきりいってイタい。
「外国製品の模倣の奨励(『本邦人の特徴たる模造擬作の自由』)」
「外国人には日本国の特許権を認めない」(第1条)
という、露骨な国内産業保護を図っており、国際的なメンツも何もありゃしないものでした(事実、外務省が難色を示していたそうです)。
さらに、特許として認める要件も、これまたエゲツない。
日本国内では知られていない発明であれば、外国文献に記載されていた技術であっても特許にでき(27条4項反対解釈)、出願前1年間、日本で使われていない技術であれば特許にでき(同5項反対解釈)、さらには、外国の製品を自分でつくらないで、輸入して使ったら特許を無効にする(28条2項)という、外国製品への嫌がらせを目的としているのでは、と思えるような条文までありました。