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西澤真生「仕事がデキる人の栄養マネジメント」

「朝起きられない&疲れが取れない」を劇的に解消する生活習慣リスト!

文=西澤真生/ひめのともみクリニック 医師
「朝起きられない&疲れが取れない」を劇的に解消する生活習慣リスト!の画像1「Thinkstock」より

 フレックスタイムや在宅ワークも少しずつ普及してきましたが、まだまだ定時出社で満員電車に揺られているという方も多いのではないでしょうか。みなさま、本当にお疲れさまです。

 さて、そのようなビジネスパーソンにとって、「寝ても疲れが取れない」「朝、起きられない」といった悩みは深刻です。今回は、朝から絶好調でバリバリ働くためのコツをお伝えしましょう。

PCやスマホの光で脳が勘違いしてしまう?

 睡眠に重要な役割を果たしている、メラトニンというホルモンがあります。このメラトニンは松果体という小さな内分泌腺から分泌され、体温や脈拍、血圧などを下げて睡眠に適した体の状態に持っていきます。

 メラトニンは日中は分泌が抑制されています。夕方から分泌が始まり、21時頃から急速に分泌が高まり、夜中にピークを迎え、朝までには日中のレベルまで分泌が下がります。メラトニンの分泌は1~5歳の幼児は多く、年齢とともに減っていきます。歳を取ると夜眠れなくなるのは、メラトニンの分泌量の変化が一因と考えられています。

 一方で、1日の活動を始める準備をするのがコルチゾールです。コルチゾールは別名「副腎皮質ホルモン」と呼ばれ、副腎から分泌されるホルモンです。目が覚める少し前から分泌が高まり、朝をピークに夕方から夜にかけて分泌が減っていきます。

 コルチゾールは血圧や血糖値などを上昇させて、1日の活動の準備をするホルモンです。コルチゾールとメラトニンは、太陽と月のように入れ替わり現れて1日のリズムを形成しているのです。

 このリズムが狂ってしまうと、朝起きられず、昼から夜にかけて元気になり、夜眠れずに朝起きられない……ということになってしまいます。そのため、分泌のリズムをコントロールすることが重要です

 日中、メラトニンの分泌が低いレベルに留まっているのは、メラトニンの合成が光によって抑制されるからです。まず、トリプトファンというアミノ酸からセロトニンが生成され、酵素反応を経てメラトニンに変わります。このセロトニンからメラトニンが合成される経路が、光によって抑制されるのです。

 特に、波長が530nm未満の光(可視光では青から紫にあたる部分)の影響を受けやすいとされています。そのため、煌々と明かりのついた部屋に夜遅くまでいると、ベッドに入ってもすんなり眠りにつけません。また、光を感知するのは網膜なので、部屋が暗くても、パソコンやスマートフォン、タブレットなどの画面を見ていると、脳は「昼だ」と勘違いして、メラトニンの分泌をやめてしまいます。

 そのため、夕方以降はブルーライトを遮断する眼鏡をかける、夜はパソコンの画面を見ない、などの工夫が必要です。「朝の光が、メラトニン分泌開始時間をセットする」という学説もあり、朝の光をしっかりと浴びる工夫も大切です。

強いストレスが睡眠リズムを狂わせる

 ところで、副腎皮質ホルモンという名前をどこかで聞いたことはないでしょうか?

 実は、アトピー性皮膚炎の外用薬や気管支喘息、自己免疫疾患などに広く使われている薬です。副腎皮質ホルモンには、広くアレルギーや炎症を抑える役割がありますが、本来の体内の働きはストレスなどの緊急事態に対応することです。

 ストレス、つまり体にとっての緊急事態が起きると、コルチゾールが普段よりもたくさん分泌されます。自律神経とも協力して、呼吸や脈拍、血圧、血糖値などを上げて緊急事態に対処しようとがんばります。

 ストレスとは、嫌なことや苦痛なことに限りません。昇進したり新しいプロジェクトを任されたり、「ここぞというときのがんばり」にも体は同じような反応を示します。また、気温や気圧、湿度の変化も体はストレスと感じます。

 ストレスがたまにであれば体は対処できるのですが、ストレスが長引いたり対処できないほど大きかったりした場合には、副腎は疲れてしまいます。副腎が疲れると、1日のリズムを支えるための量を分泌することができず、分泌のピークも遅れてしまい、睡眠リズムの乱れにつながります。

 メラトニンには光が、コルチゾールにはストレスが大敵であることがわかりました。普段の生活のなかで、これらのホルモンをさらに元気にすることはできるのでしょうか?

 メラトニンの体内合成量を増やすには、食事でしっかり材料を入れる必要があります。具体的には、トリプトファンという必須アミノ酸、合成に必要なビタミンB6、葉酸、鉄、マグネシウムなどが必要となります。

 また、エネルギー産生に重要な役割をしているナイアシンが不足すると、トリプトファンがナイアシンの合成に向かう経路にいってしまい、十分なメラトニンができなくなってしまうため、ナイアシンの摂取も大切です。

 アミノ酸については、トリプトファンだけではなく必須アミノ酸を適正なバランスで摂る必要があります。また、メラトニンを合成する経路はセロトニン合成の経路でもあるため、これらの栄養素を摂ることで気分の安定にもつながります。

糖質やカフェインの過剰摂取は疲れの元?

 コルチゾールの材料は、コレステロールです。コレステロールというと「悪者」というイメージが強いですが、実はホルモン合成には欠かせない材料です。コレステロールは、食べ物から得られるだけでなく体内でも合成されます。

 コレステロールの合成材料は、アセチルCoAという物質です。コレステロールを合成するためには、ビタミンB群をしっかりと摂り、エネルギー回路を回すことが重要です。また、コレステロールを各臓器に運ぶためには、たんぱく質も必要になるため、肉や魚でたんぱく質もしっかり摂りましょう。

 日々の生活で副腎を疲れさせてしまう要因に、血糖値の変動やカフェインがあります。特に、血糖値が急激に低下すると、副腎のほかにさまざまなホルモンや自律神経が一斉に活動して血糖値を上げようとします。その結果、自分では気づかないうちに疲れていることがあります。お菓子やジャンクフードの食べすぎ、糖質の摂りすぎなどによる食生活の乱れは、生活リズムの乱れにつながります。

 本格的な夏が始まるこの時期、いい睡眠栄養で、より快適な生活を送りましょう。
(文=西澤真生/ひめのともみクリニック 医師)

西澤真生/ひめのともみクリニック 医師

西澤真生/ひめのともみクリニック 医師

東京大学医学部医学科卒業。東京大学附属病院分院4内科入局。
ボストンに3年間滞在後、細胞膜とタンパク質の研究およびクリニック勤務。


ひめのともみクリニック開院時より内科・栄養療法・栄養解析を担当、これまでに全国3000人以上のデータを解析し、オーソモレキュラー医学に基づいた糖質制限や栄養療法の普及に尽力している。


薬に頼らない医療を目指し、予防医療や病気の根本的な解決を目的に日々診療にあたっている。栄養療法を応用し、幅広い知識と豊富な臨床経験に基づいた総合内科的見地からの的確な治療は、患者さんをはじめスタッフからも絶大な信頼を得ている。


糖質制限食を基本とした食事療法による糖尿病・メタボリックシンドロームの治療、機能性低血糖症、男女更年期症候群、副腎疲労症候群、アレルギー疾患、禁煙外来など。


西澤医師の診察予約をご希望の方は、「ひめのともみクリニックHP」をご覧ください。

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