人間同様、ペットも風邪をひいたり、感染症にかかる場合がある。こうした感染症にかかった場合は、ペットの体調はもちろんのこと、飼い主にうつってしまわないか心配する人も多いだろう。
特に猫の場合は、猫エイズともいわれる「FIV感染症」を発症することがあるが、ハルペッツクリニック東京院長で獣医師の林晴敏氏によると、「猫とヒトのエイズは、ウイルスの種類が異なるので、人にはうつらない」という。
「ただし、猫同士は感染するので注意してください。野良だった時期がある猫や、外を自由に行き来できる猫に、感染が多く見られます」(林氏)
風邪の場合も同様に、犬や猫とヒトではウイルスの種類が異なるので、ペットから飼い主へはもちろん、飼い主からペットへも感染する心配はないという。
しかし、「ペットからヒトへ感染する病気はある」と林氏は指摘する。たとえば、狂犬病はそのひとつで、犬を飼う際は予防接種が義務付けられている。
「狂犬病の主な感染源は唾液です。発症した犬に噛まれるだけでなく、自分の傷口や目の粘膜などをなめられることでも感染します。ヒトに感染すると、脳に炎症が起きてしまうなど、致死率が高く恐ろしい病気です」(同)
狂犬病は犬だけでなく、ほかの哺乳類にも感染するという。そのため、野良猫や野鳥などから感染する可能性も考えられる。
「ほかにも、猫に引っかかれてリンパ節炎を発症する『猫ひっかき病』や、犬猫から細菌感染する『パスツレラ症』『サルモネラ症』、文鳥などの鳥から感染する『オウム病』などの感染症があります。ペットとキスしたり、スキンシップのあとで手を洗わなかったりすると感染しやすくなるので、過剰な愛情表現は避けたほうがいいですね」(同)
ペットだけでなく、野生動物から病気が感染することもある。ニュースでも話題になることが多い「鳥インフルエンザ」の場合は、感染するとヒトのインフルエンザと似た症状がみられるという。
「海外では、ヒトが鳥インフルエンザに感染した事例が報告されています。日常生活で感染することは少ないですが、公園などで鳥を見かけても触らない、死がいを見つけた場合には近寄らないといった対策は必要です」(同)
また、ヒトから動物に感染する可能性もゼロではない。たとえば、ヒトから犬猫に結核が感染した例もある。相互の感染を防ぐためには、「ヒトと動物の共通感染症を知ることが大事です。そして、お互いに病気を発症していないか、定期的に検診を受けましょう」と林氏は指摘する。
また、触れ合いのあとや糞尿を始末する際には、清潔を保つなどの注意が必要だ。かわいさのあまり、ベタベタしたくなる気持ちはわかるが、病気をうつしあっては意味がない。お互いに健康的な生活を送るためには、適度な距離感を保って暮らすことが必要かもしれない。
(文=OFFICE-SANGA)
取材協力 ハルペッツクリニック東京