1970年代に端を発するといわれているペットブーム。一般社団法人ペットフード協会が2016年1月29日に発表したデータによると、犬や猫の飼い主は近年やや減少をしているものの、日本全国で犬は約991万頭、猫は約987万頭と犬猫合わせて約2000万頭近く飼育されているという。
同協会のアンケートによると、犬猫の両方で飼う理由の1位として「生活に癒し・安らぎが欲しかったから」というものが挙げられており、ペットが飼い主のストレス緩和の一助を担っていることは間違いないだろう。
しかし、ペットが飼い主に「癒し・安らぎ」を与えていても、周囲の人間にはストレスを与えている可能性があることを飼い主は決して忘れてはならない。これを忘れてしまうとモンスターペアレンツならぬ「モンスター飼い主」になってしまうからだ。
実際に多くの人々から、モンスター飼い主による被害の声が寄せられた。今回はその一部を紹介したい。
迷惑かけても知らんぷり
「マンションの駐車場を出てエントランスのほうに向かって歩いていたら、突然大きな黒いドーベルマンのような凶暴そうな犬を2匹連れた人が入り口から入ってきて、その犬が私に向かって、ものすごい勢いで吠えてきたのです。その声はとても大きく、エントランス内に響き渡り、私は心臓が止まるかと思うくらい怯えたのですが、飼い主は謝る素振りもまったく見せず、そのまま通りすぎて、しかもなんとその犬を連れたままエレベーターに乗り込んだのです。それ以降、エレベーターを乗り降りする際やエントランスを歩く際は、常にビクビクしてしまいます。本当に非常識きわまりないと思います」(30代女性)
「朝、出勤のためにマンションのエントランスに向かっていたところ、ドアが開いた瞬間に大きな犬が2匹、私に向かって猛スピードで走ってきました。私は一瞬何か起こったのかわからず、パニック状態になってカバンを落としてしまうほど混乱してしまいましたが、結局その犬は私の横を通りすぎていきました。マンションの住人が犬と一緒にジョギングをした帰りだったようで、犬のすぐ後からその人が走ってきましたが、まったく謝ることなく通りすぎていきました。頭がおかしいのではないでしょうか?」(40代女性)
「通勤時間帯に公園のすぐ側の道路を車で出勤するのですが、大型犬を3頭ほどノーリードで散歩させている人がいて、非常に迷惑しています。リードがないので犬が道路に飛び出してきたり、道路で寝そべっていたり、車に対して吠えかけてくるので、いつも神経を使って車を走らせています。また、ノーリードで自由に動きまわっているので犬の糞尿も片付けていないようです。私も犬を飼っていますが、こういったマナーの悪い飼い主が多いために、ほかの常識あるペットの飼い主まで非難されることになるのです。うんざりですよ」(20代女性)
今回アンケートを取った結果、大型犬の飼い主に関する苦情が一番多いようだ。こうした「迷惑な飼い主」たちは、「自分の愛犬はきちんと躾をしているからノーリードでも大丈夫」といった過信や、「公共の場所はみんなが使う場所だから自分も好きに使ってよい」といったマインドを持っている様子がうかがえる。
ちなみにノーリードでの散歩は、動物愛護法の第7条「動物の所有者又は占有者は、命あるものである動物の所有者又は占有者として動物の愛護及び管理に関する責任を十分に自覚して、その動物をその種類、習性等に応じて適正に飼養し、又は保管することにより、動物の健康及び安全を保持するように努めるとともに、動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、生活環境の保全上の支障を生じさせ、又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない」という部分に抵触し、東京都などの場合、拘留または20万円以下の科料に処せられる可能性もある。
他人の家の庭で鳴き続ける
このほかにも被害の声は多い。
「スーパーやコンビニエンスストアに買い物に行くと、飼い犬のリードをガードレールなどに結んで放置している飼い主がいますよね。以前、リードに結ばれた落ち着きのない小型犬が歩道を動き回っていて、そのリードが足に引っかかり転んでしまったことがあります。私も買い物帰りだったので、買ったばかりの玉子がグチャグチャに。怒りをぶつけようにも飼い主が不在でやるせなかったです。それ以来、そんな犬を見かけたら避けて歩くようにしています」(50代女性)
「最近、電車内でよく見かけて迷惑だと感じるのが、ケージにも入れずバッグの中に小型犬を連れて歩いている飼い主。たぶんぬいぐるみ感覚で犬を連れまわしているのでしょうが、朝の通勤時間帯に、しかもキャンキャン吠える小型犬を電車内に連れ込むのは神経を疑います。盲導犬などきちんと躾をしているなら納得できますけど、吠える犬を電車に連れ込むのはどうかしていますよね」(20代男性)
「家の近所に猫を6~7匹飼っている家があるのですが、その家の猫は避妊手術をしていないようで、発情期を迎えるとその鳴き声がうるさくってたまりません。その家の住人もうるさいと感じているのか、猫を夜中に家の外に出すのですが、私の家の庭で何時間も鳴き続けるものですから、発情期を迎えるのが憂鬱。一度、抗議をしましたが『うちは猫を自然のまま飼ってあげたいんです』と言っていて、開いた口が塞がりませんでした。多頭飼いをするくらい猫が好きならば、しっかりと責任を持って飼ってほしいものです」(50代男性)
犬ほど飼育の手間がかからなく、近年のブームもあって飼い主が微増しつつある猫にもモンスター飼い主がいる。避妊手術は確かに飼い主の判断するところではあるが、それで迷惑をかけていてはどうしようもない。動物愛護法の第7条には「動物の所有者は、その所有する動物がみだりに繁殖して適正に飼養することが困難とならないよう、繁殖に関する適切な措置を講ずるよう努めなければならない」という項目もあり、この部分に抵触している可能性も考えられる。
「住んでいる家のすぐ近くに近隣では有名な鳥の愛好家の住居があって、かなり迷惑しています。家の中で飼っているのですが、かなりの数を飼っているようで朝方になると鳥の鳴き声が騒音レベル。また、どういうわけか余った餌を庭に撒いて、野鳥に餌付けをしているようで、餌と糞の臭いは窓を開けられないほど。洗濯物も鳥の糞が怖くて外に干せません。正直、引越しも考えています」(30代男性)
飼い主がペットに愛情を注ぎすぎるあまり、結果として常識やマナーの範疇を超えてしまうと、近隣の住民との裁判沙汰に発展することもある。今後ペットを飼うことを考えている人は、自分がモンスター飼い主にならないように気をつける必要があるといえよう。
(文=編集部)