3月に入って一気に気温が上がり、桜の蕾も膨らみ始めている。春の訪れを喜ぶ一方で、花粉症の人にとっては、つらい季節の到来である。今年のスギ花粉は九州から東北にかけて、昨年より飛散量が多く、四国、近畿、東海、関東甲信では前年比200%以上と予想される。各地の医療機関には多くの患者が押し寄せているが、その待ち時間の長さに疲弊したという声も多い。
花粉症の治療に関しては、厚生労働省も市販薬での「セルフメディケーション」を推奨しており、多忙のため医療機関を受診できないという人は、市販薬による治療も選択肢の一つといえる。
市販薬による花粉症の治療では「抗アレルギー薬」を使用することになるが、数ある市販薬のなかから「どの薬を選ぶべきか?」と誰もが悩むだろう。市販の代表的な花粉症治療薬について、その特徴をまとめてみた。
市販の花粉症治療薬の特徴
市販の花粉症の治療薬は、抗アレルギー薬のなかでも「抗ヒスタミン薬」に分類されるものが多い。アレルゲン(アレルギー反応を引き起こす原因物資)である花粉が体内に入ると、ヒスタミンが分泌される。ヒスタミンが皮膚、鼻や目の粘膜の「H1受容体」に結合すると、痒み、くしゃみ、鼻水などのアレルギー症状を引き起こす。
抗ヒスタミン薬はヒスタミンより先回りしてH1受容体を塞いでアレルギー症状が起こらないようにするため、花粉症に効果を発揮する。しかし、ヒスタミンは神経伝達物質であり、覚醒作用を有し、集中力や判断力の維持に重要な役割を担っているため、抗ヒスタミン薬によってヒスタミンの働きを抑えてしまうと眠気が出ることがある。
「眠気が出る薬は飲めない」と諦める声が聞こえてきそうだが、抗ヒスタミン薬は「第1世代」「第2世代」に分類され、その特徴は異なる。第1世代抗ヒスタミン薬は、服用(投与)した量の50%以上が脳へ移行し中枢に作用するため、眠気などの副作用が出やすい。第2世代抗ヒスタミン薬は、脳へ移行する量が30%以下になるように改良されており、眠気が出にくいという特徴がある。
抗ヒスタミン薬の選び方
第1世代抗ヒスタミン薬のクロルフェニラミンマレイン酸塩、dクロルフェニラミンマレイン酸塩を含む市販薬を服用する場合には眠気が強く現れる傾向にあるため、運転や危険を伴う機械の操作は避けることが必要である。
仕事中など眠気が出ては困るという人は、第2世代抗ヒスタミン薬を選択するといいだろう。第2世代抗ヒスタミン薬のなかでもフェキソフェナジン塩酸塩、ロラタジンを有効成分とする薬は添付文書でも運転に関する注意はない。
<第1世代抗ヒスタミン薬>
・dクロルフェニラミン
・クロルフェニラミン
<第2世代抗ヒスタミン薬>
・エピナスチン
・エバスチン
・フェキソフェナジン
・ロラタジン
・ベポタスチン
・メキタジン
・セチリジン
また、第1世代抗ヒスタミン薬は、緑内障や前立腺肥大等の下部尿路の閉塞性疾患がある患者には禁忌(飲んではいけない)であり、該当する人は購入の際に、ドラッグストアの薬剤師に相談してほしい。
鼻づまりに適した市販薬
花粉症といえば代表的症状は「鼻炎症状」であるが、鼻炎症状には「鼻水」と「鼻づまり」がある。「薬を飲んでいるのに鼻づまりが治らない」という声を聞くことがあるが、実は、すべての抗ヒスタミン薬は鼻詰まりには効果が薄い傾向にある。市販薬で鼻づまりも改善したいという人は、塩酸プソイドエフェドリンやフェニレフリン塩酸塩という血管収縮剤が入った市販薬を選ぶとよいだろう。
花粉症の治療には、点鼻薬、点眼薬を併用することで、より症状を緩和することができる。点鼻薬、点眼薬ともに医療用医薬品と同成分の市販薬がある。点鼻薬は、使用回数を守ることが重要であり、過度に使用すると鼻粘膜への刺激が強く、逆に炎症を起こしてしまうこともあるため、注意してほしい。
点眼液については、1日の使用回数を守り、開封後は1カ月が使用期限となることに注意したい。コンタクト使用時でも点眼できる市販薬もあるが、表示がないものはコンタクトを外して使用することが基本となる。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト:外部執筆者)