薬は効果を期待して飲むものですが、効果とともに「副作用」があります。ビタミン剤だから副作用がないと思っていても、実際はあります。有名な「アリナミン」を疲労回復の目的で飲むと、軟便や下痢が続くことがあります。アリナミンは便秘の緩和に効果があり、腸の運動を活発にします。それが行き過ぎてしまうと軟便や下痢といった症状が現れるので、便秘ではない人が飲むと、「お腹が緩いな? 何か悪いものでも食べたかな?」「ストレスかな?」「調子は悪いけど、医者に行くまででもないし、このまま様子を見よう」といったことになります。
この副作用は「添付文書」には書かれていますが、ちょっとお腹が緩くなる程度なら日常生活でもあることなので、「薬が原因?」と疑って添付文書を読むことはないと思います。添付文書は熟読したほうがよいですが、アリナミンの添付文書には次のように書かれています。
<効果・効能>
1.次の場合のビタミンB1の補給
肉体疲労時、妊娠・授乳期、病中病後の体力低下時
2.次の諸症状の緩和
筋肉痛・関節痛(腰痛、肩こり、五十肩など)、神経痛、手足のしびれ、 便秘、眼精疲労
3.脚気
<相談すること>
2.服用後、次の症状があらわれることがあるので、このような症状の持続または増強が見られた場合には、服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師または登録販売者に相談すること
軟便、下痢
つまり、アリナミンは便秘薬として使うことがあり、その効果が出てしまうと軟便や下痢になるのです。
ビタミン剤だからと油断は禁物
アリナミンを飲んだ後、なんとなくムカムカすることはありませんか? これも添付文書を読むと、「吐き気・嘔吐」は副作用だとわかります。主成分のフルスルチアミンは独特の臭いがあり、これが胃を刺激することで起こります。まずいものを食べて「おぇ~」となることがありますが、まさにその現象が起こるのです。錠剤の形をしていると、舌では臭いに気が付かないまま直接胃に入り、胃で薬が溶けて独特の臭いが胃を刺激してしまうのです。
ビタミンCも胃を刺激します。ビタミンCは酸っぱい味がします。錠剤の場合は舌では「酸っぱいな」という程度しか感じず、胃に入った後に刺激に気が付きます。ビタミンCの吸収は、「能動輸送」といって腸がポンプで汲みあげるようにして体内に入ります。このポンプの稼働には限度があり、大量のビタミンCが一度に入ると吸収が間に合わなくなり、残されたビタミンCは直接その「酸」の力で胃に刺激を与えます。それによって、胸やけのような症状が起こります。
また、腸内ではビタミンCがあることで水分を引き寄せます。これは単に浸透圧の問題なのですが、それが大量にあると水分をたくさん腸内へ集めてしまい便が水っぽくなります。つまり、下痢です。医薬品量は2000mgを1日3回に分けて飲むのですが、一度に1日分の量を飲んだり、効果を期待して規定の量以上飲んだりすると、こうした症状は容易に起こります。
添付文書にも下痢について書いてあります。添付文書には必要なことしか書いていませんので、上から下まで一字一句逃さずに読んでください。
サプリメントも注意
「サプリメントは食品だから安全」と思っている方が多いと思います。通常の食品ならば、必ず舌で「これは食べ物ではない」と判定されます。しかし、サプリメントとして錠剤やカプセルの形になってしまうと、通常ではありえない量でも舌で異常を感知できずに体内に入ってしまいます。
古くから健康に良いとされてきた黒酢ですが、適切に飲んでいれば期待する効果は得られます。血圧を下げる効果も期待されます。メインの料理を食べる前に前菜として酸味のあるものを食べるのは、お酢は糖の吸収を穏やかにする効果があるためです。黒酢を使うと発酵により生じた天然のアミノ酸が効率よく摂れるため、白い酢より味に深みも増し、より健康効果を期待することができます。わたしも実際に飲んでいたことがあります。
しかし、この黒酢ですが「飲料」として飲む分にはよいのですが、濃縮してカプセルにしてしまうと“舌センサー”は機能しません。直接胃に入ると濃縮した酸で胃を破壊し、実際、胃痛や吐き気といった健康被害が報告されています。30%の酢酸を100ml飲んで中毒になった事例もあり、「酢酸として30ml」というのを目安にするとよいです。なお、製品ごとに「推奨量」は書いてありますので、それは守るようにしてください。
(文=小谷寿美子/薬剤師)