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柏木りか「経済ニュースからみる生活への影響」

初めて確定申告したら30万円戻ってきた!今年分から控除額が一斉減額、何もしないと実質“増税”

文=柏木​理佳​/城西国際大学大学院准教授、生活経済ジャーナリスト
初めて確定申告したら30万円戻ってきた!今年分から控除額が一斉減額、何もしないと実質“増税”の画像1
「国税庁 HP」より

 都内在住の山本裕典さん(仮名・49歳)は、「初めて確定申告し、30万円も戻ってきた。ズボラな性格で、これまでそんなに損していたとは」と嘆いています。 

 2020年分から所得税の控除が改正され、何もしなければ増税になる人も出てきます。スマホでも簡単にできる電子版なら、家族の名前と年齢を入力すると、自動的に「配偶者控除」や全員控除される「基礎控除」の項目が出てきます。ですが、離婚した方などは、自動的に控除項目は出てきません。シングルマザーの場合、所得金額500万円以下なら「特別寡婦控除」として35万円の控除が適用されます。夫が他界した妻の場合も該当します。

 妻にパート収入等がある場合には、配偶者特別控除は2020年分から、総所得が48万円から133万円まで、1万円から38万円までの控除がありますが、夫の所得が1000万円以下の場合のみになりました。子供のアルバイト収入を把握している親は少ないでしょうが、2020年分から合計所得金額が75万円以下なら勤労学生控除(27万円)が受けられます。

 その他、2020年分からの改正ポイントは以下の通りですので注意してください。

(1)基礎控除:10万円増額

 電子申告のページで入力すると、過去に保存していれば自動的に「基礎控除」などのデータが表示されます。そのなかで「基礎控除」の項目で48万円が引かれますが、従来より10万円増額され、減税ということになります。人手不足のため上記の控除で配偶者や学生が働ける時間が10万円分ずつ増えましたが、それ以外の控除額は以下のとおりほとんど10万円ずつ減額になります。

(2) 給与所得控除:10万円減額

 給与等の収入額に応じ、控除額が以下のように減額となります。

・162万5000円以下:65万円 → 55万円

・162万5000円~180万円:収入額の40% → そこから10万円減額

・180万円~360万円:収入額の30%+18万円 → 18万円の部分が8万円に減額

・360万円~660万円:収入額の20%+54万円 → 54万円の部分が44万円に減額

・660万円~850万円:収入額の10%+120万円 → 120万円の部分が110万円に減額

 なお、これまでは控除対象の年収上限は1000万円でしたが、それが850万円までに縮小されました。ただし、23歳未満の扶養親族や特別障害者がいる場合は調整されます。実際の該当金額は、年収からさまざまな控除を差し引いた金額で計算します。

(3)年金控除:10万円減額

 これまでの公的年金控除額から10万円減額されます。

(4)青色申告特別控除:10万円減額

「青色申告して65万円の控除があるから大丈夫」と青色申告で事前に申請書を登録している人も、10万円減額で55万円になります。ただしソフトなどを利用し仕訳や総勘定を電子帳簿にちゃんと保存し、賃借対照表と損益計算書をe-Tax上で登録すれば65万円の控除を維持できます。

副業収入にも注意

 株の売買での利益を得たら「譲渡所得」、株で毎年受け取れる配当金は「配当所得」、大家さんとしての不動産収入は「不動産所得」、会社員が副業で20万円以上の収入を得た場合は「雑所得」、フリーランスは「事業所得」になります。ネットオークションやフリーマーケットなどで収入が出た場合も確定申告が必要な場合もあります。少額、日用品の売却なら不要ですが、1個の値段が30万円以上のぜいたく品などの場合は必要です。

 国税庁の確定申告書等作成コーナーやe-Tax上で「所得税」、生年月日を入力し、「給与・年金専用」「全ての所得対応」から選びます。フリーランスの方は「事業所得者」になり、会社員が原稿料などを受け取ると「雑所得」になります。「事業・不動産・退職所得」の項目から選択を間違うと、税務署から修正の連絡があり、振り込まれる時期が遅れますので注意することです。

 今年から自分がどの控除に該当するのかを考え、領収書を保管して12月までに金額を調整するなど、2021年の確定申告では十分な対策をとることで、少しでも多くの還付金を取り戻しましょう。

(文=柏木​理佳​/城西国際大学大学院准教授、生活経済ジャーナリスト)

柏木りか/城西国際大学准教授、生活経済ジャーナリスト

柏木りか/城西国際大学准教授、生活経済ジャーナリスト

生活経済ジャーナリストとして景気の動向や物価、節約などについて伝授。
豪州の大学から香港、中国に滞在。シンガポールでは会社設立に携わる。豪州の大学院にてMBA(経営学修士)取得、研究員を経て嘉悦大学准教授に。育児中に桜美林大学院にて社外取締役の監査・監督機能について博士号取得。
現在:城西国際大学院 国際アドミニストレーション研究科 准教授。NPO法人キャリアカウンセラー協会代表。
大学では「企業戦略」「経営組織論」「キャリア」(日本語)(英語)等の授業を担当。
シンガポールで会社設立の準備に携わり、観光収入の多い豪州・香港・中国に滞在、世界15カ国の人と働く。
国土交通省道路協会有識者会議メンバー。
日本を変えるプラチナウーマン(プラチナサライ小学館)46人に選ばれる。

Twitter:@kashii1218

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