確定申告で経費を“適当に”記入して税金還付→数カ月後に税務調査!断固反論し調査官に勝利!
元国税局職員、さんきゅう倉田です。好きな調査は「任意調査」です。
毎年、国税庁から発表される「査察の概要」には、優先的に強制調査の対象となるジャンルが書かれています。これからは、国際取引、消費税還付、社会的波及効果の高い事案について調査をするそうです。調査をするにも多大なコストがかかりますから、効率良い調査が求められており、より悪質で追徴金額の多い調査対象を選ぶのは、査察部でなくとも同じです。
しかし、金額が小さいからといって、調査をしないわけではありません。税務調査の役割のなかに「牽制効果」があります。「隣の会社に税務調査があったから、うちも気をつけよう」といった気持ちにさせる効果を意図しているわけです。だから、一般的な会社員以外は、税務調査がいつきてもおかしくないと考えて、正しく申告する必要があります。
僕の知人で駆け出しのシンガーソングライターであるAさんが税務調査にあったことがあります。彼の年収は300万円くらいだったそうですが、5年分の確定申告をすると、すぐに税務調査の連絡があったそうです。今回は、彼の確定申告の内容と税務調査の結果について解説します。
Aさんは、アルバイトをしながら音楽活動を行っていました。音楽での収入は月に1万円程度で、CDの制作費や衣装、ライブハウスのエントリーで消えてしまいます。正確には、消えるどころか赤字です。芸人と同じく、芸能活動の費用はアルバイトで賄わなければいけません。
アルバイトは2つ掛け持ちしていました。居酒屋と牛丼屋です。昼は牛丼屋、夜は居酒屋でアルバイトをし、週に1度音楽活動があるかないかの生活です。お金には、常に困窮していました。
確定申告で税金が還付されたが、税務調査が来た
ある日、音楽仲間にお金のことを相談すると、確定申告をすれば税金が還付になると聞きました。Aさんは、よくわからないけれど税務署に行き、遡って5年分の所得税の確定申告をしました。事前にアルバイト先から源泉徴収票をもらっていたので、申告書の作成はスムーズです。しかし、税務署の職員に「経費を入力してください」と言われました。
初めての経験なので、経費が何かもよくわかりません。このときは、特に追及されることもなく、優しく教えてもらえました。職業を告げ、それに関する経費にどんなものがあるのかを職員と考えます。