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さんきゅう倉田「税務調査の与太話」

確定申告で経費を“適当に”記入して税金還付→数カ月後に税務調査!断固反論し調査官に勝利!

文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人

 しかし、領収証がありません。衣装代やスタジオ代、楽器、CDの制作費など、5年間でいくらかかったのか、わかりません。職員のアドバイスを受けて、“なんとなく”で書くことにしました。「これでいいのだろうか」という気持ちはあったのですが、税金が還付されるのだから、背に腹は変えられません。

 印鑑を押して提出し、1カ月後には還付金が無事に振り込まれました。「あんなに適当でよかったんだ」と胸を撫で下ろしましたが、数カ月後に税務署から「税務調査をしたいのですが……」と、連絡がありました。まさに青天の霹靂です。

 Aさんは困惑し、「脱税で逮捕されるのか」と動揺していました。調査官は、1週間後に自宅に来ると言います。その日まで、音楽もバイトも手につきません。自分はこれから一生、犯罪者として生きていかなければならないと覚悟しました。親にも恋人にも相談できず、悩む日々が続きました。

 調査当日、10時に調査官はやってきて、Aさんが以前に提出した申告書を見せられます。申告書と一緒に収支内訳書という書類も提出していて、そこに経費を書いたわけですが、調査官はそこを指摘してきました。

「消耗品300000、交通費150000、接待交際費200000となっていますが、なぜ0が並んでいるんですか? 適当に書いていませんか?」

 確かに、適当に書きましたが、脱税で捕まるわけにはいきません。「収入より経費のほうが多くなったので、これ以上書いても無駄だと判断して、端数を切り捨てました」と、断固たる決意で主張し続けました。2時間ほど、このことで言い合いになりましたが、最後は調査官が折れて帰っていったそうです。

 規模が小さくとも、簡単に否認できそうであれば、税務調査が行われることがあります。0を並べて記入するのは、いいかげんな申告の典型的な例ですが、Aさんのように、なんの正当性もなくても強く主張すると、調査官も心がまいってしまうこともあるでしょう。しかし、どんなときも正確な記載が必要です。

 なお、Aさんのような申告で、脱税に問われたり、前科がついたりすることはありません。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)

さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人

さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人

大学卒業後、国税専門官試験を受けて合格し国税庁職員として東京国税局に入庁。法人税の調査などを行った。退職後、NSC東京校に入学し、現在お笑い芸人として活躍中。著書に『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』(総合法令出版)、『お金持ちがしない42のこと』(Kindle版)がある。
さんきゅう倉田公式ホームページ

Twitter:@thankyoukurata

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