年収695万円以下だと、確定申告で税金が戻ってくる?
今回は本連載前回記事に引き続き、株の配当金と税金について、女性公認会計士コンビ、先輩の亮子と税務に強い後輩の啓子が解説していきます。
亮子「こうしてみると、配当金に関する税金って、本当に不思議だね。どういう処理をするかで、税額が異なる」
啓子「そもそも、株式会社の利益が財源であるという前提がある一方で、受け取った株主の手間の軽減をしようという配慮があるなど、視点によってどう扱うべきかという考え方が変わってくるからでしょうか」
亮子「もう、いっそのこと、『配当金は税金なし!』と言ってくれればいいのに」
啓子「それがNISAですよ。文句を言っても仕方ありませんから、配当金に関する税金について具体的に計算してみましょう」
配当控除を計算してみる
税額から控除できる金額は、表の通りです。配当金の額によって異なります。なお、今回も上場企業の株を保有している場合の配当金を前提に話を進めていきます。
その年の課税所得から1,000万円を差し引いた金額に達するまでの配当所得の金額(A)、つまり1,000万円を超える配当所得部分は控除税率が5%に下がります。例えば、配当所得(源泉徴収前の収入金額)が10万円の場合(課税される所得※が1,000万円以下)、税額控除額は10万円 × 12.8%(所得税10%+住民税 2.8%)=1万2,800円となり、1万2,800円分税金が安くなります。
前回触れた通り、配当控除を受けるためには、確定申告をして総合課税を選択する必要があります。
損益通算と繰越控除
損益通算、繰越控除とは、株式を売却して損失が出た時などに使える制度で、いずれも確定申告をする必要があります。2017年に株式売却による損失が5万円となったケースを考えてみます。17年に配当金を3万円受け取ったとすると、損失と配当金を相殺(配当金3万円-損失3万円 =0円)して、課税対象所得0円とすることができます。その場合、源泉徴収されていた20.315%分の税金が返ってきます。これが「損益通算」制度です。株の売買による損失と配当は合算することができます。
また、2017年に相殺しきれなかった損失2万円は翌年に繰り越すことができます。これが「繰越控除」制度です。この損失は、発生した年に相殺しきれない損失があった場合、翌年以降3年間繰り越すことができます。仮に、翌年の18年の配当金が5万円あったとしたら、前年の損失と相殺して課税される所得を3万円とすることができます。
その結果、18年に返ってくる税金は次のように考えます。