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浅井佐知子「世界一やさしい 不動産投資のお話」

新型コロナ、不動産価格下落期に突入の兆候…上昇期終焉のタイミングと重なりか

文=浅井佐知子/不動産鑑定士、不動産投資コンサルタント
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新型ウイルス肺炎が世界に拡大 金融市場にも影響(写真:日刊現代/アフロ)

 こんにちは! 不動産鑑定士、不動産投資コンサルタントの浅井佐知子です。

 新型コロナウイルス感染が世界中で広がっていますね。国内では政府が大規模イベントの中止や延期を要請した結果、経済活動の停滞が景気を一段と下押しするのではないかという思惑から株価も大きく値下がりしています(2月下旬時点)。世界的にも株安連鎖に歯止めがかからない状態です。

 今回はこの新型コロナウイルス感染拡大の影響が不動産価格にも影響を及ぼすのか? ということについて考えてみたいと思います。

 そのことを述べる前に、ざっくりと今の不動産市場がどうなっているのかを見てみましょう。

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 こちらの図は、財団法人日本不動産研究所発表の「不動産投資家調査」の数値をグラフにしたものです。期待利回りが低いほど、価格が高いということになります。オフィス、レジデンス、ホテルなどアセット別になっています。このグラフを見るとわかるように、2007年当時、利回りは下がりましたが、その後リーマンショックが起きたため反転上昇(価格は下落)しました。そしてアベノミクスが始まった2012年ころを境にまた下がり始めています。それから8年経ち、現在の利回りは一番低い水準にあるのがわかります。アベノミクス以降、価格はずっと上がり続けているということになります。

 次に、中古マンションの価格の推移を見てみましょう。東京都の中古マンションの価格(成約単価)を表したグラフが以下の通りです。レインズデータライブラリーの数値を採用しています。

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 こちらは2011年を底にして、現在まで右肩上がりで上昇しているのがわかります。この2つのグラフからわかることは、現在の日本の不動産市場はアベノミクスが始まった2012年以降、ずっと価格が上昇しているということです。

 次に、不動産の価格のサイクルを平成バブルが始まった1985年から見ていきましょう。

1.1985年から始まった平成バブルは1990年から1991年にかけて終わりました。

2.不動産の価格は大きく下落しましたが、2003年を底として反転し、その後リーマンショックが起きる2008年まで少しずつ回復します。

3.2008年からアベノミクスが始まる2012年までは都心の商業地を中心に、地価は毎年10%以上の下落が続きました。

4.2012年に始まったアベノミクスにより現在まで、上昇し続けています。

 以上のことから上昇のサイクルはそろそろ反転しても良い頃のようにも思えます。そういう意味では新型コロナウイルスは下落へのトリガーになるかもしれません。これが時間軸の流れから見る不動産市場です。

区分マンションの価格下落は限定的?

 さらに違う観点からも考える必要があります。それは現在、世界的な金融緩和の影響で低金利、かつお金が余っている、ということです。また日本の個別事情を取り上げると、将来の不安から近年、不動産投資をする人が増えています。以前はアパート経営をするのは先祖代々土地を所有していた地主さんと決まっていましたが、ここ数年は不動産投資ブームで土地を所有していない会社員の方が将来の資産形成のためにアパートやマンションを購入しています。

 そのため、投資用の不動産の利回りは下がり続けていたのです。金融機関としても低金利の今、儲けられるのは不動産投資をしたい人への融資です。先日、世間を騒がせたスルガ銀行による不正融資などが問題になり、金融庁の注意喚起もありましたが、まだまだ不動産融資に積極的な金融機関が多いのです。

 そんななか、今回の新型コロナウイルス感染が起きたのです。株価は大きく下げ、旅行客が激減したことですでに破産した旅館も出てきました。今後も旅行客の減少から破産する旅館やホテルが増えるかもしれません。観光産業、飲食店、デパートなども大打撃を受けることは確実です。

 では、不動産はどうでしょうか?

 不動産は売ろうとしてもすぐに売れるわけではないので、株や為替よりも影響があとになって出てきます。新型コロナウイルスの影響が長引けば、不動産の価格にも変化が現れます。影響が短期間で終われば不動産の価格に変化はないということです。

 投資用不動産に関しては、価格が下がっても賃料が入ってきますから、売らないでそのまま持っているという選択肢があります。また不動産の投資市場に影響を与えるのは貸出金利と、融資の出やすさです。リーマンショックの時は、融資が引き締まったため、買いたくても買えない投資家がたくさんいました。従って今回も金融機関が融資を引き締めた場合は買える人が少なくなり、相続などで至急現金が必要な人たちが、相場よりもかなり安い価格で売らざるを得ないことになります。このような状態の時は価格が下がります。

 いずれにせよ、区分マンションの値段が上がりすぎたため、オリンピック後、値段が下がった時期に狙いを定めて買おうとして待ち受けている人たちがたくさんいます。今回、新型コロナウイルスのせいで区分マンションの価格が下がれば、今までずっと待っていた人たちが買い始めるのではないかと思います。そうすると、思ったよりも価格は下がらないかもしれませんね。

 以上をまとめてみると、次のようになります。

・新型コロナウイルスの影響が長引けば、不動産市場にも影響が出てくる(下がる)

・時間軸から考えて、新型コロナウイルスは下落へのトリガーになる可能性がある。

投資用不動産は買いたい投資家がたくさんいるが、金融機関の融資姿勢に左右される。

・中古マンションは値段が下がれば、下がるのを待っていた人たちが買い始めるため下落は緩やか。

 東京オリンピックが中止になるとさらに影響は大きくなると思いますが、上記の流れは変わらないと思います。

浅井佐知子/浅井佐知子不動産鑑定事務所代表

浅井佐知子/浅井佐知子不動産鑑定事務所代表

不動産鑑定士。大手不動産会社の法人営業として土地の有効活用、ビル1棟売買などで多数の実績を上げる。その後結婚・出産を経て、不動産鑑定士資格を取得。鑑定士資格を持つ不動産投資コンサルタントとして、これまで1,000件以上の不動産鑑定、5,000件以上の賃貸・売買案件をこなしている。著書に『世界一やさしい不動産投資の教科書1年生』など。
浅井佐知子不動産鑑定事務所の公式サイト

Twitter:@sachiko_asai

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