さらに、納税通知の発送が4月以降になるため、この調査を終えてデータを入力する期限がだいたい1月から3月になるのですが、この時期は確定申告の時期と重なって、本来ならば税務署の管轄になる確定申告の対応に税務の役所職員が駆り出されてしまう市町村も多々あります。そのため、もともと人手不足のところに追い打ちをかけられているようななかで課税データの最終チェックを行うという危うい状況になっているのです」(同)
さらに、ミスの原因はそれだけではないと杉森氏は続ける。
「役所の人事サイクルが早まっている、ということも原因のひとつとして挙げられます。以前はどの役所にも勤続10年以上の固定資産税の専門職員のようなポジションの方がいたのですが、現在は職員が2~3年ごとに異動をしてしまうケースが多い。そのため、スキルが成熟する前に異動してしまい、なかなか専門的な知識やスキルを備えた職員が育たない状況になっているのです」(同)
納税者側としても、行政側としても、決して望ましくはない状態といえるだろう。
納税者自身による明細のチェックが重要
役所の人手不足や人事の都合など原因は多岐にわたるようだが、我々が固定資産税を過剰に払う必要性は、もちろん一切ない。そのためには毎年の明細を納税者自身で細かく確認することが大切だと杉森氏は語る。
「役所にミスがある以上、納税者は自分の目で明細を細かく確認することが大事。毎年届く明細書と昨年の明細書を見比べて、不審な点、不明な点がないかをしっかりとチェックするようにするのがいいでしょう。評価額や税額が前年度と比較して、急激に上がった場合も、下がった場合も要チェックです。実際に役所がデータの誤った修正をして、急に固定資産税が高くなっていた事例もありました。過剰に支払っていた分は還付もされるので、少しでも不審に思ったらすぐに役所に問い合わせるといいでしょう」(同)
過徴収された固定資産税が還付されるのは、原則的には過去5年間に過徴収された分になるので、毎年欠かさず確認すべきだ。また、固定資産税に誤りがあると、ほかに支払う税金にも影響が及ぶこともある。決して他人事ではないということを今一度再認識し、毎年の確認をより慎重に行うようにすべきといえよう。
とはいえ、そもそも行政側がミスを頻発させてしまう体制に問題があるのはいうまでもなく、職員1人当たりの負担を減らすことが重要だ。