平均寿命の上昇等を背景に、4月に11年振りに標準責任準備金の計算の基礎である「標準生命表」が改定されます。平均寿命や平均余命を知るための「簡易生命表」は見聞きしたことがあるかもしれませんが、「標準生命表」はあまり馴染みがないかもしれません。
標準生命表は、保険会社が会計上積み立てる標準責任準備金の計算に用いられる死亡率のことです。その改定を踏まえて、保険料を算出する際に用いる予定死亡率が引き下げられます。保険会社はあわせて、予定利率や予定事業費率などのほかの保険料計算基礎利率を改定するようです。結果として、予定死亡率等の引き下げにより、死亡保障の保険料は低くなる一方、生存率の改善により給付金支払いが増加する医療保障(終身タイプ)の保険料は高くなることになります。
ただし、各保険会社の販売戦略があることから、保険料が一律に改定されるわけではなく、各社各様となるようです。
ここで注意したいのが、予定死亡率等の改定、言い換えれば「保険料」の負担が変わるたびに、「保険料が上がる前に加入したほうがお得ですよ」あるいは「保険料が引き下げられる予定ですから、保険に加入するのは待ちましょう」といった解説が聞かれます。一見すると、もっともだと思われるかもしれませんが、保険=保障は、「保険料の負担額の大小」で決めるのではなく、「保障の必要の有無」で決めるのが基本だということを忘れてはならないのです。
「必要な時期に必要な保障を得る」
代表的な死亡保障(死亡保険)は、被保険者に万一のことがあり残された家族が経済的に困るのであれば、加入する必要はあるでしょう。しかし、経済的に困る人がいない独身の人、家族が遺族年金や働いて得られる収入や保有する金融資産などで生活が賄える人であれば、死亡保障は不要ということになります。
死亡保障が必要であったとしても、生涯同一額、あるいは歳を重ねるほど死亡保険金が高額になるなどということもありません。死亡保険金がもっとも高額になるのは末子が生まれた日です。なぜなら、親の役目(子育て)は子どもを社会に出すまでだからです。あとは子どもの成長とともに死亡保険金額は減少していくことになります。
保険に加入する際は、保険料改定の時期などで判断するのではなく、「必要な時期に必要な保障を得る」ことが、いつの時代も基本となります。車の保険にたとえれば、車を運転するから自動車保険に加入するのであって、車を運転しなくなったら加入する必要はないということです。
(文=深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー)