1カ所でその会社の何物件もの分譲マンション情報を取得できる集合型のマンションギャラリーが増えています。2023年に入ってからも、東京建物、野村不動産、日鉄興和不動産とたて続けに集合型マンションギャラリーを設置しているのです。いまなぜ集合型なのでしょうか、上手に活用するにはどうすればいいのでしょうか。
2011年に住友不動産が先鞭をつける
新築マンションといえば、建築現場の近くや、最寄り駅の駅前などに建設されたモデルルームを見学して情報を収集するのが一般的です。個別に何件も回らなければならず、物件選択の大きな障害になってきました。
その常識を覆したのが、2011年からスタートした住友不動産の「総合マンションギャラリー」でした。同社が販売している代表的な物件のモデルルームのほか、すべての新築マンション情報を紹介し、住宅機器・設備などを触って体感でき、マンション販売に関するあらゆる相談に対応できる拠点を、東京・山手線主要駅近くに5カ所設置したのです。現在では首都圏7館、関西3館、東海と東北に1館ずつ、全国に合計12館を設置しています。いずれも主要駅から徒歩10分以内ですから、休日に家族連れで訪問するのはもとより、平日に仕事帰りに、買い物のついで立ち寄ることができ、たいへん好評だそうです。
子ども連れでもゆっくりと見学、相談できる
住友不動産では、集合型のマンションギャラリーのパイオニアとして、さまざまな機能を付加してきました。各ギャラリーに専任スタッフを配置して、コンシェルジュデスクを設置、さまざまな相談から、物件選びの相談、契約に当たっての手続きまで、ワンストップで対応します。まだ物件選びが漠然とした段階の人たちに対しては、各種の無料セミナーを開催して集客力を高め、小さな子どもがいる世帯を念頭において、キッズルームを設置しているので、安心してじっくりと見学、相談できます。
最近では、コンセプトルームのバーチャル見学、設備や仕様のバーチャル見学なども可能になっていて、集合型ギャラリーでのリアルの体験と、バーチャル体験を組み合わせて、さまざまな情報を取得できるようになっています。
分譲会社にも個人にもメリットが大きい
集合型のマンションギャラリーは、分譲する不動産会社、購入希望者双方に大きなメリットがあります。不動産会社としては、物件ごとに現地近くにモデルルームを建設する必要がなく、経費の節減になります。人材面でもモデルルームごとにスタッフを採用したりする必要がなく、常設のギャラリーで専任スタッフをじっくりと育成できます。何より、モデルルームを建設しては壊すことの繰り返しをストップすることができ、SDGsの時代に相応しい取組みといえます。
消費者にとっても、1カ所で多くの情報を入手できるので、効率的ですし、時間や交通費の無駄などをなくすことができます。まさに、不動産会社、購入希望者双方にとってメリットがあり、ウインウインの関係になります。そうした点が評価され、他の不動産会社でも、集合型のマンションギャラリーを設置するケースが増えています。
東京建物は新宿センタービルに開設
特に、2023年に入ってからその動きが加速されています。2月には、Brilliaマンションの東京建物が東京・新宿に、プラウドシリーズの野村不動産がやはり東京・新宿に、そして3月にリビオマンションの日鉄興和不動産が東京・品川に設置しました。
東京建物の「Brillia Gallery新宿」は、2023年2月に東京都新宿区の西新宿にある新宿センタービルのMB1階に開設されました。主に都内の総戸数100戸程度のBrilliaマンションの情報を提供します。当面は、3月から「Brillia三河島Station Front」のショールームがオープン、順次新築マンションの一般販売・紹介を行っていきます。東京建物では、このギャラリーの設置により、販売手法、オンライン商談の充実を図ると同時に、環境負荷の低減を目指します。特徴としては、(1)新宿駅徒歩5分というアクセスに優れた立地、(2)Brilliaのコンセプトショールームのほか、眺望・間取り・設備・インテリアなどを確認できるVRコーナーの設置、(3)よりリアルに感じる精度の高いVRの活用、(4)リラックスできるアロマの香りや音響コーディネーターが手がけるBGM――などで、成約率の向上を目指しています。
ちなみに、ショールームの第一弾となる「Brillia三河島Station Front」は、東京都荒川区荒川三丁目で、JR常磐線「三河島」駅徒歩1分の駅前立地のマンションです。鉄筋コンクリート造15階建てで、総戸数は56戸、2LDK、3LDKの間取プランが用意されます。
野村不動産は新宿野村ビルの35階に
プラウドシリーズの野村不動産も、2023年2月に東京都新宿区の西新宿に、「プラウドギャラリー新宿」を開設しました。やはり西新宿の超高層ビル街ながら、こちらは、新宿野村ビルの35階です。野村不動産ではこのほか虎ノ門、五反田などでプラウドギャラリーを展開しており、この新宿で7館目になるそうです。
プラウドギャラリー新宿では、当面「プラウド阿佐谷南二丁目」「プラウド王子神谷」を取扱います。将来的には10物件以上を扱える大型拠点化を図る計画です。既存のプラウドギャラリーにはない各種の機能が付加されます。さまざまなデジタルデバイスを活用した「LOBO ZONE」を設置、ヴァーチャル音声システムによる情報収集、VR模型、3面スクリーンのプロジェクター投影を活用した間取り可変性の体験などがあり、「プラウドギャラリー新宿」を訪問したからこその多様な経験ができます。
そのほかにも、「プラウドギャラリー新宿」ならではの付加価値を加えました。(1)国産木材・再生材の積極活用により環境負荷低減、(2)働き手の顔が見えるオープンスペースを用いたオフィス空間、(3)利用者の健康・安全性を評価する認証精度の国際認証「WHSR」をマンションギャラリーとして初の取得――などが挙げられます。
オンラインとリアルの良さを活かせる場に
リビオマンションシリーズの日鉄興和不動産は、3月に「LIVIO Life Design SALON」を開設します。場所は東京都品川区港南二丁目で、JR品川駅前の品川インターシティA棟の20階です。先の2件と同様に、都内のビッグターミナルの駅近という交通アクセスに恵まれた立地で、休日に家族で訪れるだけではなく、平日の仕事の帰りなどにも気軽に立ち寄れるような場所といっていいでしょう。
日鉄興和不動産では、これまでマンション販売におけるDXを推進し、マンションのオンラインストアや3次元LEDシアターであらゆる間取りを実物大で体験できるデジタル技術などを開発してきましたが、マンションの販売においてはそうしたバーチャル空間の活用だけではなく、やはり体面での相談など、リアルな体験も重要であることを実感してきました。そこで、オンライン、デジタルの良さとリアルの良さを活かせる場として、今回の集約型マンションギャラリーの設置に至りました。LIVIO Life Design! SALONに5つのサンプルルームや新商品、共用部の紹介スペース、没入感をもってマンション立地を体験できるプライベートシアター、間取りや家具配置を実寸で映し出す3次元LEDシアターなどを備え、専任のコンシェルジュが対応します。
ここでは、「リビオ北品川リバーサイドテラス」「リビオレゾン参宮橋」「リビオレゾン中村橋千川通り」「リビオレゾン町屋」の4物件が扱われますが、今後は同時に10物件程度に取扱い物件を増やす予定なので、利用者の利便性が高まりそうです。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)