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住宅ジャーナリスト・山下和之の目

住宅購入に必要な年収、マンションが一戸建てより200万円も高く…年収1千万が必要

文=山下和之/住宅ジャーナリスト
住宅購入に必要な年収、マンションが一戸建てより200万円も高く…年収1千万が必要の画像1
「gettyimages」より

 一戸建てかマンションか――マイホームの取得を考える上では永遠のテーマですが、実際、購入する人たちにはどんな違いがあるのでしょうか。このほどリリースされたリクルートSUUMOリサーチセンターの一戸建てとマンションの契約者動向調査から、違いを探ってみました。

半数強は一戸建てを希望している

 まず、一般の人は一戸建てかマンションか、どちらが望ましいと考えているのでしょうか。国土交通省の調査をみると、図表1のようになっています。全国平均では、「一戸建て」が望ましいとする人が54.4%で、「マンション」が望ましいが16.4%、「戸建て・マンションどちらでもよい」が20.5%でした。かつて1990年代半ばくらいまでは、「一戸建て」派が90%を超えていましたから、年々一戸建て志向が減って、マンションが増えているようです。それでも、全国レベルでは半数強が一戸建てを希望しています。

 地域的にみると、大都市圏ほど一戸建て派が減って、マンション派がやや多くなります。東京圏では、「一戸建て」が48.3%と半数を切り、「マンション」が21.9%に増えます。逆に三大都市圏以外の地方圏では、「一戸建て」が57.5%に増え、「マンション」は13.8%にとどまっています。

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報告書(統合版) (mlit.go.jp)

一戸建てのほうが何かと自由に使える

 では、なぜ一戸建てがいいのでしょうか。一戸建てを選んだ人に、一戸建てのほうが望ましい理由を聞くと、図表2のようになっています。最も多かったのは、「一戸建ての方が、補修や建て替えの際の手続きが簡易で、自由度が高いから」の38.0%で、「一戸建ての方が、隣家との関係に気を使わなくてすむから」が34.4%、「購入すれば、土地を含めてすべて自分のものになるから」が29.9%となっています。マンションも所有権があるといっても、土地は共有で、専用部は自分ひとりで勝手、自由に使うことにはさまざまな制約がありますから、自分ひとりの判断で何かと自由にできる一戸建てのほうがいいということなのでしょう。

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報告書(統合版) (mlit.go.jp)

マンションは利便性の高い物件が多い

 逆に、マンションのほうが望ましい理由としては、図表3のようになっています。マンションの管理は管理組合、管理会社などに任せることができるし、一戸建てより利便性の高いマンションが多いことなどが挙がっています。実際のところ、一戸建てを買う人、マンションを買う人ではどんな違いがあるのでしょうか。リクルートSUUMOリサーチセンターでは、毎年新築マンション、新築分譲一戸建てを買った人を対象に、契約者の動向調査をまとめています。このほど、その首都圏を対象にした2022年版がリリースされたので、両者の違いを探ってみましょう。さて、あなたはどちらが向いているのでしょうか。

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報告書(統合版) (mlit.go.jp)

マンションのほうが平均3歳近く年上

 一戸建て、マンションを買った人たちの平均年齢は図表4のようになっています。一戸建てについて、この調査が始まった2014年には37.2歳だったのが、2022年は37.1歳と、この8年ほどさほど大きな動きはありません。それに対してマンションも2014年には37.8歳と一戸建てとさほど大きな差がなかったのが、この2年ほどで急激に年齢が高くなりました。2020年は37.7歳、2021年38.8歳、2022年39.7歳と、2年で2歳年齢が上昇しました。マンションでは平均年齢40歳が目前に迫り、一戸建てに比べると3歳近くも年齢が高くなっています。

 恐らく、後に触れるように、マンション価格が急激に上がってきたため、ある程度年収の高い人でないと買えなくなり、結果的に年齢がアップしたのではないかと推察されます。マンションはそれなりの年齢、年収にならないと、購入が簡単ではないわけです。

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2022年首都圏新築マンション契約者動向調査 (recruit.co.jp)

2022年首都圏 新築分譲一戸建て契約者動向調査​ (recruit.co.jp)

マンション購入には年収1000万円が必要?

 そこで、一戸建て、マンションを買った人たちの総世帯年収をみてみると、図表5のようになっています。2014年は一戸建てが720万円、マンションが801万円と両者には80万円ほどの差しかなかったのですが、その後ジワジワとマンション購入者の年収が高くなり、2021年には1019万円と年収1000万円台に乗せ、2022年にはさらに1034万円に増えました。一戸建てを買った人の年収も高くはなっているのですが、それでも2022年は805万円で、マンションとの間には200万円以上の差がついています。

 首都圏マンション価格の上昇で、マンションは年収が1000万円以上ないと簡単には購入できないようになっているのかもしれません。実際のところ、年収1000万円超の人がそうそういるわけではないでしょうから、現実的には夫婦共働きで総世帯年収が1000万円以上を超えているという人たちが多いのではないでしょうか。

 首都圏で新築マンションを買った人たちの共働き率をみると、2022年の全体では57.4%ですが、既婚世帯では72.8%と7割を超え、既婚世帯でも子どものいない夫婦のみ世帯では87.6%と9割近くに達しています。首都圏、なかでも都心やその近くの高額マンションになると、共働きでないと簡単には買えないのが現実かもしれません。 

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2022年首都圏新築マンション契約者動向調査 (recruit.co.jp)

2022年首都圏 新築分譲一戸建て契約者動向調査​ (recruit.co.jp)

マンションの購入価格の平均は6000万円近くに

 一戸建てとマンションの購入価格の平均は図表6のようになっています。2014年段階では、一戸建てが3936万円で、マンションが4340万円と400万円ほどの差しかなかったのが、2022年では一戸建てが4406万円に対して、マンションが5890万円と1500万円近い差がついています。参考までに、全額を金利1.5%、35年元利均等・ボーナス返済なしのローンを利用して購入すると、マンションの毎月返済額は19万5113円で、返済負担率(年収に占める年間の返済額の割合)をより安全な範囲といわれる25%に抑えるためには、936万円の年収が必要になります。

 それに対して、一戸建ては4406万円なので、同じ条件でローンを利用すると毎月返済額は14万5954円で、必要な年収は701万円にダウンします。先の総世帯年収の違いとほぼ同じような結果であり、一戸建ては年収800万円ほど買えるのに対して、マンションは年収1000万円ほどが必要ということになりそうです。

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2022年首都圏新築マンション契約者動向調査 (recruit.co.jp)

2022年首都圏 新築分譲一戸建て契約者動向調査​ (recruit.co.jp)

マンションは資産価値重視で選択?

 購入する意識にもかなりの違いがありそうです。一戸建て、マンションを買った理由を聞いてみると、図表7のようになっています。どちらも「子供や家族のため、家を持ちたいと思ったから」がトップなのですが、一戸建てではそれに次いで「もっと広い家に住みたかったから」や「持ち家のほうが自由に使えて気兼ねがないから」などが続いているのに対して、マンションでは「資産を持ちたい、資産として有利だと思ったから」が2位に挙がっています。

 このところ首都圏のマンション価格は大幅に上がり、資産価値が高まっています。東京カンテイの「マンションのリセールバリュー調査」では、10年前に分譲されたマンションが、現在中古マンションとして取引される場合、分譲時価格の119.8%で取引されているそうです。つまり平均でも1割以上価値が高まり、なかには3割、4割と上がっているエリアもあります。住まいの資産価値を重視するなら、間違いなくマンションということになりそうです。

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2022年首都圏新築マンション契約者動向調査 (recruit.co.jp)

2022年首都圏 新築分譲一戸建て契約者動向調査​ (recruit.co.jp)

一戸建て、マンションどちらが向いているのか

 一戸建てとマンションには、購入者のプロフィールに大きな違いがあり、購入に当たっての考え方にも差がありそうです。あなたはどちらに近いでしょうか。以上のように実際に購入している人たちの実像をみれば、自分たちがどちら向いているのか、方向性がある程度みえてくるのではないでしょうか。

(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)

山下和之/住宅ジャーナリスト

山下和之/住宅ジャーナリスト

1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に、新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトの取材・原稿制作のほか、各種講演・メディア出演など広範に活動。主な著書に『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(執筆監修・学研プラス)などがある。日刊ゲンダイ編集で、山下が執筆した講談社ムック『はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド』が2021年5月11日に発売された。


はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド2021~22


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