歯科業界の悲惨な実態!コンビニより多く過当競争、破産・夜逃げも続出…
14年の勤務医の平均年収1146万円に対して、勤務歯科医は734万円です(厚労省「賃金構造基本統計調査」)。前年の13年には勤務医の平均年収が1072万円で、勤務歯科医は621万円でしたから、どういうわけか医師が74万円増、歯科医師が113万円増と、かなり異常な増加で持ち直しています。
公表上の報酬があまりに安いままだと医大経営にも響くとばかりに、厚労省が集計方法を一部都合よく修正したのではないかとの見方も多いですが、本当に上がったのならば喜ばしいことでしょう。たしかに東京都内は診療所乱立で過剰ですが、地方に行くと、家賃が安いので勤務医の報酬も高くなる傾向があります。
独立開業は「命がけ」
ちなみに、6年制の歯学部卒業には、公立で600万円、私立だと3000~6000万円もかかります。私立に行くのは親が開業医の場合も少なくないとはいえ、3000万円以上もの学費をかけたら元を取るのも大変です。それでも「開業医になれば勤務医よりは儲かるだろう」と考えて開業する人が、年間2000人は下らないわけです。
しかし、診療所のテナント代だけで300~500万円、床上げ配管や内外装工事に1500万円、医療機器に1200~1500万円、広告費や開業時の材料費、事務機器費用、運転資金に1000万円は必要です。東京都内だと4000~5000万円かかり、毎月の家賃も割高です。自己資金1000万円が工面できたとしても、残り3000~4000万円は金融機関からの借金です。
診療所の経営が1年経っても2年経っても軌道に乗らなかった場合、これはもうやっていけません。その結果、夜逃げによる失踪、自己破産という結末になってしまう開業歯科医が少なくないのも現実です。
14年12月、東京都北区で歯科医院を経営していた夫(56歳)に1億円の借金があることを知った歯科衛生士の妻(51歳)が激怒、連日「自殺して保険金で借金を返せ!」と罵り、実際に夫が自殺する――という事件がありました。妻は「自殺教唆」でいったん逮捕後、書類送検されたものの、1億7000万円の保険金を受け取ったそうですが、こういう事件も起こるようになってきたのが歯科医師業界の地獄の現実なのです。
厚労省のずさんな政策の犠牲者であるといっても、言いすぎではないでしょう。
(文=神樹兵輔/マネーコンサルタント)