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山田昌弘「日本に関する考察」

なぜ若者は自民党に投票したのか? 現状に満足する若者、満足しない中高年

文=山田昌弘/中央大学文学部教授
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政治的態度の4類型

政治学では、次の政治的態度の図式がよく使われる。現状に満足か、不満かという軸、そして、将来の変化に楽観的か、悲観的かという軸で4つの類型をつくり、その類型ごとに政治的態度が決まる。順にみていこう。

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(1)現状の社会に満足し将来も楽観している人々は、進歩、つまりリベラルとなる。これが、リベラルの元の意味である。現在の制度も悪くないけど、社会が発展すれば今よりも過ごしやすい社会になるはずだ。社会制度を時代に合わせて緩やかに変化させようという考え方になる。だから進歩なのである。多分、これは1990年以前の「自民党」主流派、解体した旧民主党、欧米ならアメリカの民主党や、ヨーロッパの中道左派政党がこれにあたる。

(2)現状に満足でも将来を悲観視すれば、保守となる。つまり、現状の社会制度を変えることは、社会をむしろ悪くするという考え方である。現在の社会制度を変えずに守ることが、基本的政策となる。今の自民党やアメリカの共和党主流派、そしてヨーロッパの中道右派政党がこれに当たるだろう。

(3)現状に不満であれば、今の社会制度にその原因を求めることになる。将来、今の制度に取って代わる新しい制度をつくり出すことが必要だと考えれば、それが「革新」(ラディカル)となる。旧社会党や昔の共産党などは、この立場をとっていた。だから革新政党を名乗っていたのである。2000年代初めの「自民党をぶっ壊す」といった小泉純一郎元首相の考え方は、革新的だった。もちろん、旧左翼は社会主義のユートピア、小泉元首相は新自由主義のユートピアを目指すという目標は違ったとしても、現状を打破し、未来の社会に夢を託すという意味で、ラディカルだったのだ。海外ではヨーロッパの左翼政党がこれに当たる。

(4)現状に不満、かつ将来にも理想となる社会のモデルが描けないとすると、理想の社会を過去に求めざるを得ない。過去の社会を理想として、それに戻ることを主張するのが、反動、いわゆる「右翼」と呼ばれる立場である。ただ、どの時代を理想とするかによって、その主義主張は大きく異なってしまうので、ひとくくりにすることはできない。女性に選挙権がなかった戦前の大日本帝国まで戻そうと考える人もいる。ヨーロッパやアメリカでは、グローバル化以前、外国人労働者がいなかった時代に理想を見いだす人もいる。そういう意味では、すべてを正社員にしろと主張する一見革新的な意見も、時代を戻そうとするという意味で反動に分類できるのである。

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