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山田昌弘「日本に関する考察」

なぜ若者は自民党に投票したのか? 現状に満足する若者、満足しない中高年

文=山田昌弘/中央大学文学部教授
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生活満足度が高い日本の若者

 この図式をみると、日本の若者が「保守」である今の自民党を支持する理由が見えてくる。つまり、日本の若者の多くは「現状に満足」しているが、将来に悲観的、正確にいえば「将来の社会に夢をもてない」からである。

 まず、現状への満足度をみてみよう。内閣府(省庁統合以前は総務省)は、ほぼ毎年、「生活満足度」を調査している。ここで16年10月のデータをみてみると、18歳から29歳までの若者の満足度が、他の世代に比べ突出して高くなっており、不満が多いのは50代を中心とした層であることがわかる。

なぜ若者は自民党に投票したのか? 現状に満足する若者、満足しない中高年の画像6

 ちなみに、1973年の調査と比べてみよう。公開データでは、男女別の数字がないが、20代の若者が最も低く、60歳以上で高くなるという傾向が分かる。

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 この頃は、まさに現状に不満な若者、満足している中高年という図式が成立し、若者の革新政党支持、中高年は「進歩」もしくは「保守」という図式が成立した。当時の自民党は現状の制度をよしとしながら、福祉を重視したり、中国国交回復したりと、将来に向けて進歩的な政策を行っていた。それでは不十分だと感じる勢力は、もっとラディカルに社会主義を理想としたことは周知の事実である。

革新や反動にいかない日本の若者

 
 若者の生活満足度が世界的に見ても高いし、他の世代に比べても高いことが、日本の若者の右傾化や左傾化を食い止めているといってよい。
 
 確かにネット右翼は存在するし、SEALDsのように安全保障法案に反対の若者も存在する。しかし、多くの若者は彼らの主張に耳を傾けるようには見えない。そもそも、憲法9条を守れというのは、政治的態度からいうと、現状を変えないという意味で「保守」ともいえるのだ。

 これが、欧米だとそうはいかない。若年失業率が高く、若者に不満が集中する。そして過去に理想を求めれば右翼となり、移民反対やEU離脱への指示につながる。一方、グローバル化し寛容な社会に期待を寄せる若者は、反・右翼デモに集まる。失うもののない若者は、そのエネルギーや時間を社会変革に使うのである。

 しかし、日本では若者のエネルギーは就職活動や長時間労働に費やされ、選挙となると現状維持を約束する自民党に投票するのだ。

 では、なぜ現状に満足で将来に希望をもてない若者が増えたのだろうか? その理由は次回に考察したい。
(文=山田昌弘/中央大学文学部教授)

●山田昌弘(やまだ・まさひろ)
1957年生まれ。81年東京大学文学部卒業。86年同大学院社会学研究科博士課程退学。東京学芸大学教授を経て現職。専門は家族社会学。愛情やお金を切り口として、親子・夫婦・恋人などの人間関係を社会学的に読み解く試みを行う。「パラサイト・シングル」「格差社会」という流行語を生んだ『パラサイト・シングルの時代』『希望格差社会』をはじめとして、『新平等社会』『少子社会日本』『なぜ若者は保守化するのか』『底辺への競争』、また共著に『「婚活」時代』、編著に『「婚活」現象の社会学』など著書多数。

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