今年の夏の甲子園を沸かせた東海大相模の2枚看板、小笠原慎之介選手と吉田凌選手。2人はともにMAX151キロの速球を武器の一つとしており、プロのスカウトからも注目を浴びている。
速球は野球のロマンの一つ。テレビ中継でも生で見ても、球の速さに息を呑むことがある。
しかし、肉体が衰えれば球速も衰えていくもの。それでも、65歳ながら140キロの速球を目指すとんでもない挑戦をしている男がいる。
それが、マサカリ投法で一世を風靡した、元ロッテオリオンズ・村田兆治さん。プロ野球の通算成績は215勝177敗33セーブ。先発完投型の投手で、速球とフォークを武器に打者へ真っ向勝負を挑んだ。
怪我に苦しめられた現役時代であったが、引退後もその速球はたびたび話題になり、2013年に始球式で投げた球速は135キロを記録。63歳としては驚異の数字だ。しかし、村田さん自身は140キロをまだ目指しているという。
『人生に、引退なし』(プレジデント社/刊)は65歳を迎えた村田さんが挑戦を続ける理由を明かした一冊だ。今もなお熱い気持ちを持ち続けられる秘訣はどこにあるのだろうか?
■小学生相手にもムキになる
投手は冷静でなければならない一方で、村田さんは「冷静すぎるのも問題」と考えているという。村田さんは選手時代からすぐにムキになる性格で、今でも小学生相手にさえムキになることがある。
子ども相手とはいえ、やるからには絶対に負けない! もちろん、自分が子どもに伝えなければいけないのは野球の楽しさだ。恐怖心を与えるようなことはしない。それを踏まえた上で、正々堂々と戦う。手を抜かない気持ちは相手に伝わるものだし、本物のすごさを知ってもらいたいという想いもあるという。
そんな信念を持ってイベントにのぞむ村田さんだが、あるイベントで小学生にヒットを打たれてしまい、「そのときの対戦を思い出すだけでも、ついムッとしてしまう」とつづっている。とてつもない負けず嫌いなのだ。
■名球会の投手たちが明かす「勝てる投手」の条件
村田さんは、あるとき「名球会」(通算200勝、通算250セーブ、通算2000本安打以上の記録を残した選手のみが入れるプロ野球の会員組織)の投手たちと勝ち星が増えない投手について話していたところ、不思議とみな意見が同じになったそうだ。
それは「マウンドからの光景だけを見て投げている投手」だということ。
勝ち星を積み重ねられる投手は上空に視点を持っていて、俯瞰したマウンド上から投球を展開できるようになる。野球はそれぞれのポジションから見える光景がまったく異なるが、その事実に気付き戦況を冷静に見ることができるかどうかが、投手の差を生むと村田さんは述べる。