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徳岡晃一郎「世代を超えたイノベーションのために」(10月16日)

もうスペシャリストは役に立たない?どんな難題も解決に導く「究極の思考法」

文=徳岡晃一郎/経営コンサルタント、多摩大学大学院研究科長
もうスペシャリストは役に立たない?どんな難題も解決に導く「究極の思考法」の画像1「Thinkstock」より

 当連載では、これまで5回にわたって知識創造理論のSECIモデルをベースにした「SECIキャリアモデル」について論じてきた。そして、それを通じて、自分自身の思いを育み、開花させ、次代につなげていくキャリアや生き方について考えてきた。

 そこで述べてきたような、人生を通じた知の文脈づくりをすることで、私たちは自分の知性を磨き続けることができる。自分の知の文脈づくりに関心を払わないと、都度の状況に動物的に反応するだけの人間になってしまう。

 しかし、自分の知の文脈づくりに気を配って生きることができれば、着実に知が蓄積され、物の見方が多面的かつ鋭くなり、物事を深く考える基礎体力がつく。それが知性である。

 答えの出ない面倒で複雑な問題に対しても、いろいろな角度から検討を加えて、真理に近づこうとする体力こそ、知性だ。それは、常識的な答えで満足したり、複雑なことを考えるのを避けてしまう姿勢とは、正反対といえる。

 しかし、「自分は知的に考えているのか?」「多面的に考えているのか?」という問題は、なかなかとらえにくい。知的に考えているようで、実は堂々巡りをしているケースも多い。

 今回は、そんな時の手助けになるアイデアを紹介したい。それが、「垂直統合の思考」だ。

 これは、多摩大学大学院の田坂広志教授が提唱している発想法であり、「スーパージェネラリスト」になるための必須スキルだ。スーパージェネラリストとは、単なる物知りのジェネラリストではなく、複雑困難な課題に多面的に立ち向かうことができる知と実行力の持ち主といえる。

 最近は、専門的な知識を持つスペシャリストでは歯が立たない問題も多い。例えば、原子力発電所の安全性に詳しいスペシャリストがいても、津波の予測や避難時のシミュレーションまで完璧に行うのは不可能だ。

 現代は、ミクロな問題に向かえば向かうほど、論理過多や分析過多を引き起こしてしまう時代といえる。それゆえ、幅広い視野が必要だ。

 しかし、最近の問題の複雑性は、単に専門知識がたくさんあれば済むほど単純ではない。問題があった時、それを解決するというスタンスではダメで、「社会全体をどういう方向に持っていくか」という仮説や課題の設定ができないと、問題解決の入り口にすら立てないからだ。

 原発の問題を解くのか、エネルギーの問題を解くのか、安全保障の問題を解くのか……。専門的な解をいくつも知っているということと、行き詰まった地球や組織の未来を考えることは違う。

徳岡晃一郎/経営コンサルタント、多摩大学大学院研究科長

徳岡晃一郎/経営コンサルタント、多摩大学大学院研究科長

ライフシフトCEO
多摩大学大学院教授、研究科長、フライシュマンヒラード・ジャパン シニア・ヴァイス・プレジデント、多摩大学社会的投資研究所所長

1957年生まれ。東京大学教養学部卒業。オックスフォード大学経営学修士。日産自動車人事部、欧州日産を経て、99年フライシュマン・ヒラード・ジャパンに入社。人事およびコミュニケーション、企業文化、リーダーシップなどに関するコンサルティング・研修に従事。2014年より多摩大学大学院研究科長、2017年ライフシフトを設立、CEOに就任。主な著書に『MBB:「思い」のマネジメント』(共著、東洋経済新報社)『未来を構想し、現実を変えていく イノベーターシップ』(東洋経済新報社)、『人事異動』(新潮社)、『ミドルの対話型勉強法』(ダイヤモンド社)、『人工知能Xビッグデータが「人事」を変える』(共著、朝日新聞出版社)、『しがらみ経営』(共著、日本経済新聞出版社)など他多数。
株式会社ライフシフト

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