こんな社員は真っ先にリストラ&排除される!感情論や権利の要求ばかりで無責任
少し前の話だ。ある会社で、経営改革が行われた話を伺った。新社長は低迷する業績への対策として思い切った異動とリストラを進め、会社を立て直すことに成功した。だが、その道程は苦難に満ちていた。特に新社長への反対勢力の処遇については困難を極めた。
新社長は、こう振り返る。
新社長:「私に賛成してくれる若手たちは、放っておいても良い仕事をしてくれました。価値観を共有できていたからです。しかし、反対勢力の処遇は非常に困りました」
筆者:「もしかして全員クビにしたのですか」
新社長:「いや、そんなことはしません。全員辞めさせてしまっては、私の周りはイエスマンだけになってしまいます。健全な反対派は、むしろ会社を活性化します。粛清は手っ取り早いですが、その後に人材が残らなくなってしまうケースも多くあります」
筆者:「では、反対派をどのように扱うのでしょうか」
新社長:「辞めさせるべき反対派と、残すべき反対派はまったく違います。会社は民主主義ではないので、辞めさせるべき人物は排除しますが、良い人は残します。良い人は尊重すべきです。つまり、私のやり方に反対である、というだけでひとくくりにはできないのです」
筆者:「その両者には、どのような違いがあるのでしょうか」
新社長:「いくつかあります。よく彼らの主張に耳を傾ければ、その違いは歴然としています」
筆者:「具体的に、どのような違いがあるのか教えていただけないでしょうか」
新社長の見解はこうだ。
「ひとつ目は、私の『政策』に対して反対意見を言っているのは構わないが、私の『人格』に対して何かを言う人物は排除しました。おそらく折り合いがつかないと考えたからです。2つ目は、意見が『理想的』な人物は排除しました。愚痴ばかり言って、自らの発言に責任を持たない人物です。一方、『現実的』『実務的』な意見を提言する人物は残すのです。これは対案を出しているので、むしろ有能です」
感情論ではなく、前向きな思考ができるか
さらにこう続けた。
「3つ目、無知は排除します。無知な人物は勉強もせず、向上心もありません。単に感情的に反対しているだけです。逆に深謀遠慮のある人物は、必ず根拠を示して反対意見を述べます。4つ目、思考・視点が『社内向き』の人物は排除します。『◯◯さんがかわいそう』『◯◯さんはがんばっている」という意見は、顧客への価値提供にはまったく関係がありません。逆に『社外向き』は歓迎です。『これは会社の評判を下げる』『あれは会社の利益に貢献する』といった意見は、たとえそれが間違っていたとしても、ありがたいものです。最後に、『権利の要求しかしない人物』は、利己的なので排除します。権利の要求と義務の表明を同時に行う、たとえば「◯◯という約束を果たすから、◯◯してほしい」という人物は残します。彼らは自分のやるべきことを理解しているといえます」
最後に新社長は言った。
「私は、何年か前のアメリカ大統領の就任演説が非常に良かったと思っています。『国が何をしてくれるかではなく、君たちがこの国に何をするかが大事』という部分です。会社も同じです」
後日、筆者はこの会社を再度訪問した。
「商売は順調ですか?」と社長に伺うと、「ぼちぼちです。つい先日発表した新商品が、それなりにうまくいって、ありがたいです」と言う。聞くところによると、改革当時「社長に楯突いた」人物が、現在新商品のマネジャーになっているということだ。
そのマネジャーに話を聞くと、彼は次のように言った。
「当時は腹がたちました。職場の仲間がリストラされていましたからね。だから社長に『今やるべきなのは、リストラではなく新商品の開発です』と反発しました。そうしたら、社長は『では、あなたが新商品の責任者をやりますか』と言いました。もちろんやりました。社長を見返したかったからです。リストラは嫌でしたが、今振り返ると、確かに職場の雰囲気は良くなりました。社長はそれを見越していたのでしょう」
リストラされた人は、社長に楯突いたゆえに職を追われたのではない。前向きでなかったから、リストラされたのだ。
(文=安達裕哉/経営・人事・ITコンサルタント)