人との距離感がわからない。苦手な人とうまく付き合えない。といったコミュニケーションに関する悩みを抱えている人は多いだろう。
相手の心の中がわかればもっとうまく話せるのに。そんな風に考えたこともあるはず。よくある人間関係の悩みを解消したいときに用いたい学問が、相手の言動から心の動きを科学的に分析できる心理学だ。
■あなたの会話はなぜ弾まないのか?
『マンガでわかる 人間関係の心理学』(渋谷昌三著、みずなともみ・サイドランチマンガ、池田書店刊)では、マンガを交えながら人間関係を楽にするための人の心のしくみを解説する。
会話が弾まない原因のひとつとして「相手との距離感がつかめない」ということがあげられる。もっと相手に踏み込めば活路は拓けるのだが、意見の食い違いや衝突を避けてる気持ちや、傷つきたくない思いもあって、なかなかできない。
一方で、本当はコミュニケーションをもっと深めたいとも思っている。この2つの思いの板挟みで、距離感が上手く取れなくなってしまうのだ。
人との衝突を回避ばかりしていると、お互い言いたいことも言えなくなり、コミュニケーション不全にもなってしまう。お互いに相手を深く理解するためが故の意見の食い違いはおかしいことではないし、当たり前のことでもある。
傷つかずに上手くコミュニケーションをとるのは難しいことだと認識していれば、意見の食い違いや衝突が起きたときも、あまり不安にならずに相手と会話できるはずだ。
また、適度な距離感をはかるためには、相手のことをもっと知ることが必要だ。苦手意識を持っている人なら尚、相手のことを理解しなければ、人間関係を深められない。
本書では、もっと具体的に職場でありがちなどう接していいかわからない相手とのコミュニケーション方法も多く例に挙げている。
例えば、飲み会の席で「昔はよかった」と昔話ばかりしてくる年長者の話を聞かなければいけない、という経験は誰にでもあるのではないだろうか。なぜ、昔話をするのか。その心のメカニズムを知っておけば、相手のことも受け入れる気持ちになるかもしれない。
本書では郷愁にふける中高年の4つの心理をあげている。
・つらい記憶はしまい込んで、よかった記憶しか残っていない
・苦しい時代をよく乗り切ったと自分を褒めたい
・若者や時代から取り残される不安を回避するために、現実から目を背けている
・若者が知らない時代を生き抜いた優越感に浸ることで肯定する
昔話をすること自体を相手に変えてもらうのは難しいので、こういった心理を理解しておけば、話を聞く側の気持ちも大きくなり、受け答えも上手くできるようになるのではないだろうか。
初対面の人とはどう話したらいいだろう、など、人間関係の悩みがなくなることはないかもしれない。けれど、その都度対処する方法を知っておけば、悩みも軽減するはず。そういった心理学を用いたテクニックを使うには、まず相手のことを知ろうと努力することが大切なのだろう。
(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。