私の家の近くには2軒コンビニがある。最寄りのコンビニまでは歩いて1分かからず、深夜つい行ってしまうことがあるくらい身近な存在だ。
日本全国にあるコンビニ。国内の総店舗数5.5万店で、年間売上高10兆円。1カ月の来店者数14億人。平均すると1人が月に10回以上は足を運んでいる計算になる。店舗数、売上高とも増加を続け、単なる小売店にとどまらず、経済や行政、物流など、各種サービスを提供する社会インフラともいえる。
大都市部ならばそこら中にあるコンビニだが、日本全国を見れば、いまだ6割の高齢者がコンビニから300メートル以上離れた場所に住んでいて、徒歩によるアクセスが悪い「コンビニ難民」なのだという。
『コンビニ難民』(竹本遼太著、中央公論新社刊)は、各種データなどを駆使し、コンビニ難民の実態を浮かび上がらせ、課題を探っていく一冊だ。
■都市部と地方でまったく環境が異なる
ある店舗から最も近くにある別の店舗までの直線距離は、日本中の店舗で測ると中央値は324メートル。コンビニ店舗の密集度合いは大都市部ほど大きく、東京23区ではコンビニ間距離の中央値は119メートルとなる。
実際、都心のオフィス街では交差点の四隅に3店、4店あることも珍しくないが、その一方で、人口規模の小さい都市になるほどコンビニの立地はまばらで店舗間の距離は遠くなる。人口1万人未満の町村では、ある店舗から次の店舗を探そうとすると、直線距離で1キロメートル以上移動する必要が出てくる。
■全高齢者の6割程度はコンビニへのアクセスが不便
コンビニの社会インフラ化が確立していくにつれて、自宅近くにない地域の住民にとって不便が大きくなる。そして、20年後には全人口の3人に1人が65歳以上という高齢化社会となる日本で、徒歩圏にコンビニがあるかどうかは、高齢者の生活の質を大きく左右することになるだろう。
著者によれば、日本全国で最寄りのコンビニから直線距離で300メートル圏内に居住している高齢者の割合、そのカバー率は39%なのだとか。これは、全高齢者の6割程度は、徒歩によるコンビニへのアクセスを不便に感じていることになる。
コンビニのカバー率を高い順に並べると、東京都(76%)に次いで大阪府(61%)と神奈川県(56%)となる。一方、島根県(14%)、岩手県(16%)、鳥取県(19%)、佐賀県(19%)はカバー率が20%未満と低い。この数値からコンビニ難民は地方部において深刻な状況にあることが推察される。
■人口規模の小さな地域の課題にコンビニが役に立つ?
飲食物の購入から公共料金の支払いやATM、クリーニング、防犯や防災の手助け、1月に始まったマイナンバー制度で各種証明書を出力するコンビニ交付サービスまで、インフラとして多様な機能を備え、進化し続けるコンビニ。しかし、本書を読むと、人口規模の小さい地域では普及率はまだまだ低いところが多い。
今後、到来する超高齢化社会で、さまざまなサービスに対応するコンビニが徒歩圏内にあることの重要性は高まっていくはず。今後の日本の将来の課題解決の1つの策にコンビニが一役買うことになるかもしれない。
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。