コメント欄が開放されていれば、感想や質問を書くようにした。世の中には丁寧に質問に答えてくれたり、真摯に対応してくれる書き手が案外多いのにも気付いた。私も多くの人に記事を読んでもらうようになったからわかるが、ブログはあくまで誰かに読んでもらいたいから書いているのであって、やはり反応を返してくれる人の存在はありがたいものだ。
●なんでも無料というウェブの特性
自分が必要とする情報の多くは無料で手に入った。例えば経済関連の雑誌・新聞のウェブサイトには、多数の記事やコラムが無料で掲載されている。資格の取得などを除けば、多くの業界で仕事に関する情報を得るのに、ほとんどコストはかからないのではないか。
最近読んだとある酒造メーカーの話で、社長が新しいお酒をつくりたいのだが、杜氏(とじ・酒造りの職人)はその方法をまったく知らない。その一方、社長は業界向け雑誌に載った記事を読んでいるので知っていたという話がある。現場での経験がすべてにおいて勝るのではないという、わかりやすい例だ。以前私が書いた『持ち家は資産か? ~持ち家に関する二つの幻想~』という記事は、多くの人に自分の記事を読んでもらうきっかけとなったものだが、多数の評価をいただけたのも、損得ばかりが議論されていた持ち家と賃貸の比較に、従来なかったリスクという視点を持ち込んだ点が大きな理由だと思っている。資産運用的な視点で考えればリスクを考慮するのは当たり前なのだが、売ることばかり考えている不動産業者や損得の話しかできないFPにはない視点だった。
英語を勉強するには英語のラジオをつけっぱなしにすると良いといわれるが、私はこれをビジネス・金融の業界で実践した。前述したような情報・知識を読み込む以外に、テレビの経済ニュースを毎日録画して、食事の時間や本を読む時に流しっぱなしにしていた。ちゃんと見ていなくても、重要なニュースは繰り返し報道されるので自然と頭に入る。
また、漫然と情報を取り込むだけでは意味がない。その時々で、経済界で話題になったテーマに関する本も読んだ。簿記の資格の勉強も並行して行った。とある投資家のブログに、「決算書を読むには簿記を勉強すると良い」と書いてあったからだ。これはビジネス・金融の情報を理解する際の土台となった。初めて読む難解なビジネス本でも理解できたのは、簿記の勉強をしていたおかげだ。
●ツイッターは勉強を加速させる
ツイッターは、ウェブを利用した勉強にさらに加速をつけた。勝手に師匠と決めた人にはコメントを書くようにした。ブログを書いてツイッターで告知をする、という流れが一般的になると、ツイッターで感想を書くようにした。当初はなかなか反応を返してもらえなかったが、徐々にリツイートされたり、コメントをもらえるようになっていった。どういうコメントを書けば反応してくれるだろうかと、その人のブログを読んでから1日ほど考えることもあった。平凡な感想やコメントではスルーされるので、短い文章の中に自分なりの見解や鋭い質問を書かなければいけないから必死だ。一見バカらしい行動に見えるだろうが、これが自分にとっては最高に良い勉強になった。
情報を読むだけなら誰でもできる。ここから自分なりの考えを導くための思考は、訓練を積まなければできない。ツイッターで質問をすると、これを自然とやることになるわけだ。池上彰さんの「良い質問ですね」というフレーズは一時話題になったが、良い質問は話を進める際に非常に重要で、書き手にとっても論を進める際にはありがたいものだ。こうしたことをやっていると、ほとんどその人から授業を受けているような気分になった。私の「師匠」は多数のコラムをあちこちで書いていたり、毎日ブログを更新していたので、勉強の材料に不足することはなかった。
「インプットだけでは身につかないので、アウトプットとしてブログを書くと良い」と言う人もいるが、個人的にはあまりお勧めしない。無名な書き手のブログは読む人がいない。読み手のいないブログを書くほど、むなしいことはない。書き続けたからといって反響が増えるほど甘くもない。そんな状況で無理にブログを書くよりは、自分の「師匠」に反応をもらえるようなコメントを考えるほうがよほど勉強になる。
タイトルから、もっとお手軽な内容や、何かすごいノウハウを期待していた方には申し訳ないが、こういうかたちで知識を蓄えておくと、経験を積んだ時のレベルアップの仕方がまるで違う。知識×経験=能力と考えれば、知識・経験のどちらかが足りなければ、どちらかで補うことはできる。業界によってどのようなやり方が最適かは当然異なるだろうが、参考になれば幸いだ。
●ウェブはバイキング形式のレストラン
「本なんか読んでも意味がない」
「資格なんか取っても役に立たない」
「ウェブ上に役立つ情報なんてない」
こういう事を言う人は少なくない。もし身近に手取り足取り24時間何でも教えてくれるその道の達人がいるのなら、本も資格もウェブも不要だろうが、そんな恵まれた環境の人はまずいない。