今のお笑い界は、大学を卒業した芸人が増えている。それは女芸人にも言えることで、『女芸人No.1決定戦 THE W』(日本テレビ系)の初代チャンピオンのゆりやんレトリィバァは関西大学、ライブだけでなくテレビのネタ番組やラジオなどにも活躍の幅を広げている「相席スタート」の山崎ケイや、バラエティ番組でおなじみの「ハリセンボン」の箕輪はるかは早稲田大学を卒業している。また、中退ではあるが、今年の3月に芸能界を引退して新しい道を選んだブルゾンちえみは島根大学に通っていた。
さらに注目すべきは、高学歴な上に普段は会社員として働いている女芸人も増えてきているという点だ。おそらく、ほかの芸人のようにアルバイトをしながらお笑いを続けることはできるだろう。しかし、彼女たちには、あえて社会人になる道を選んで、社会人経験を芸の肥やしにしようという考えもあるのだろう。
では、実際に誰がどんな仕事をしているのだろうか? 社会人としてバリバリ働きながら、お笑いにもしっかり力を入れている女芸人3名を見てみよう。
アンゴラ村長(にゃんこスター)
まずは、2017年の『キングオブコント』(TBS系)で準優勝を勝ち取った「にゃんこスター」のアンゴラ村長。17年の春に、現在の相方であるスーパー3助とライブで知り合った。2人は、それまで共にピン芸人として活動していたが、『キングオブコント』に出場するため、即席コンビを組むことに。そして、結成から半年もたたずに『キングオブコント』準優勝をつかみ取ったのだ。
『キングオブコント』後は正式にコンビを組み、プライベートではスーパー3助と恋人同士で、ついには同棲を始めるなど、いろいろな意味で注目を集めた(現在は破局)。
そんなアンゴラ村長は、早稲田大学文学部を卒業後、新宿区のIT系ベンチャー企業に就職している。営業職で正社員採用されていて、週5日は会社員として働いている。アンゴラ村長の場合は会社名を大々的に公表していて、過去にはテレビ番組の密着取材で働く様子が放送されたこともある。
サーヤ(ラランド)
2人目は「ラランド」のサーヤ。ラランドとは、上智大学のお笑いサークル出身の男女コンビだ。昨年の『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)の敗者復活戦で、唯一の無所属フリーコンビとして登場。決勝戦進出は叶わなかったが、しっかりとしたコント漫才を披露して、ひそかな話題となった。
ボケのサーヤは現役OLで、ツッコミのニシダは上智大学に通う現役大学生(当時)と、2人とも異色の経歴の持ち主だと話題になった。年始の恒例番組『新春おもしろ荘』(日本テレビ系)にも出演した、期待の若手だ。
18年に上智大学を卒業したサーヤは、現在は港区の広告代理店に勤める港区OLだ。企業のPR・広告業務に携わり、舞台に立つ演者としてだけでなく、それを支える広告業界の目線も取り入れつつ、ネタ作りに生かしている。
「フジテレビュー!!」のインタビューの中でも、「マスコミのコンプライアンスやNGを避けたネタをつくらないとテレビで最後まで放送してもらえない」という主旨の話をしており、会社で学んだことがしっかりと実になっているようだ。
たかまつなな
最後に紹介するのは、『ワラチャン!U-20お笑い日本一決定戦』(日本テレビ系)で優勝した、お嬢様芸人のたかまつなな。フェリス女学院中学校・高等学校を卒業後、慶應義塾大学へ。その後、慶應義塾大学大学院に通いながら、東京大学大学院にも在学していた超エリートの女芸人だ。
もともとはサンミュージックプロダクションに所属していたが、15年にフリーに転身。芸人以外に、お笑いジャーナリスト、YouTuberとしての活動もスタートしている。16年には、笑いで世直しすることを掲げた「株式会社笑下村塾」を立ち上げ、代表取締役社長も務めていた。
そんなたかまつななは、18年にNHKにディレクター職で入社。NHKは副業禁止のため、個人の芸人活動はボランティアの一環と位置付けて、ライブ出演や講演会を続けている。
会社員とお笑い芸人という二足のわらじを履きながら、自分で選んだ道をしっかりと歩いて行く。令和では、彼女たちのような生き方がセオリーになるのかもしれない。
(文=安倍川モチ子/フリーライター)