家族や親戚が中小企業を経営しており、その株式の一部を保有しているが、配当金も出ないため、売却したい。身内が持っていた中小企業の株を相続することになったが、巨額の相続税が発生しそう。
実はこうした非上場株式に悩む人は少なくないと語るのが企業再生コンサルタントの喜多洲山氏だ。
今回は非上場株式を換価するための方法を解説した『少数株主のための非上場株式を高価売却する方法』(幻冬舎刊)を上梓した喜多洲山氏にお話をうかがい、非上場株式の買取・売却マーケットの可能性について語ってもらった。
(新刊JP編集部)
可能性を秘めている非上場株式のマーケット
――洲山さんの立ち上げた「株式買取相談センター」というサービスは今までになかったとうかがっています。きっかけはなんだったのでしょうか。
喜多洲山氏(以下、洲山):私の本業は事業再生コンサルタントなのですが、同業の友人から、親族と喧嘩をして会社を追い出されてしまった女性の相談に乗ってくれないかと言われたのが最初でした。もともと父親が社長で、自身は監査役をしていて、株も持っていたんですが、跡を継いだ兄によって監査役をクビにされ、配当も出ないと。なんとか換金できないかということでした。
その時は私にもノウハウがありませんでしたから、自分なりに会社法を学び、その女性と契約をして、会社に株の買い取りを相談したんですね。そうしたら、相手の会社は弁護士を立てて、非訟事件として裁判にかけて株価を決めましょうということになったので、こちらも公認会計士の先生に相談をしたり、不動産もお持ちだったので、不動産鑑定士に不動産価格の算定をお願いしたりとして、結果的に株価は1億円を超える金額になったんです。
――なるほど、実務で非上場株式の売却方法のノウハウを築き上げていったわけですね。
洲山:そうです。知人の弁護士の先生のところに寄せられた相談に応じたりね。自分が株式を買い取り、譲渡承認を会社側にしてみたら、先方がそれを認めたので、我が社が株主となって1年半くらいですかね。株を買い取ってもらったという事例もあります。
相談者から株を買い取ることなく代わりに交渉するのは、弁護士法に抵触することになります。だから自分が当事者になるために、株式をまず買い取らないといけない。弁護士の先生にリーガルチェックを受けながらビジネスモデルを確立してきました。
――本書のタイトルに「非上場株式を高価売却する方法」とありますが、そのコツはなんでしょうか。
洲山:交渉事なので、落としどころを設定した上で、いかにその落としどころの根拠を示かということが重要だと考えています。
いわゆる株価の評価ですが、これは本その第3章で詳しく説明しています。「ネットアセット・アプローチ」「インカム・アプローチ」「マーケット・アプローチ」という3つの評価方法があり、それぞれ長所と短所があります。こちらは本書の第3章で詳しく説明しているのでぜひ参考にしてください。
交渉はエネルギーが必要で、実際に帳簿閲覧権を行使して、帳簿を閲覧しに行ったことも何度かあります。会社側からすると、黙っておいてほしいところを、株を買ってくれと面倒なことを言ってくる存在だと私たちのことを思っているでしょう。それにキャッシュが減るわけですしね。
――2018年にこのサービスを立ち上げられて2年ですが、状況はいかがですか?
洲山:このサービスのことをまったく外に広めていないのですが、それでも20件ほどの取り扱いをしてきました。
――ニーズがある、と。非上場株式のマーケットについてどんな可能性を感じていますか?
洲山:大きなマーケットに成長できると考えています。財務省の企業調査によれば、資本金1億円以下の企業の内部留保は160兆円あると言われています。その0.01%でも160億円になるわけですが、規模的には年間100億円くらいのマーケットになる可能性があると私は思っていますね。
もともと中小企業のM&Aも、日本M&Aセンターという会社がマーケットを開拓し、今や一つの大きな市場となっているわけですよね。ですから、株式買取ビジネスもニーズは膨大にあると考えています。
――本書をどのような人に読んでほしいとお考えですか?
洲山:非上場株式を持っていて、それをお金に換えたいと思っている人ですね。また、そういった方々にアプローチできる税理士や弁護士の先生に読んでいただければ参考になると思います。
――ぜひここを読んでほしいというポイントがありましたら教えてください。
洲山:税金や株式の評価の方法は分かりやすく書いたつもりです。ただ、専門的な話が続くので、70代や80代の方が読むには少し内容が重く感じるかもしれませんが、参考程度に抑えていただいて、その上で税金の専門家である税理士に相談してもらえるといいと思います。自分の持っている株がお金に換わるということが分かってもらえるだけでもありがたいですね。
――本書の事例集の中に、非上場株式の相続を2度行った女性がでてきますが、2回目の相続の際に相続税が27倍になっていて、なおかつ家族仲のこじれで八方ふさがりになる姿を見てゾッとしますね。
洲山:もちろん、仲が良いご家族もあるのでしょうけど、一方で仲違いしてしまっている家族もあります。骨肉の争いは珍しくないことで、このビジネスをやっていると何度もそういう場面に出くわします。当事者間で話し合いができない場合は、私たちのような赤の他人が入ることでスムーズにいくことも多いんですよね。
――自分自身が不幸なことにならないように、心当たりがある方には読んでほしい一冊ですね。(了/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。