突然だが、あなたの職場でこんなことが起きていないだろうか。
「職場の上司はいつも怒るときに感情的になり、いつも部下である自分に非があるように言ってくる。こちらは議論をしたいけれど相手が応じてくれないので、ストレスが溜まる一方。何を言っても無駄だから自分も何も言わず、問題は解決しないまま終わってしまう」
これはよく見かけるケースだが、もちろんこのままではお互いにとってマイナスになるばかりだろう。
そして、もし本当にこうした関係をクリアしていきたいと望むのであれば、大切なことが一つだけある。それはあなた自身の考え方を改める必要があるということだ。
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アドット・コミュニケーション株式会社代表取締役の戸田久実さんは、著書『苦手意識がなくなる会話術』(大和書房刊)で、相手との関わり方や伝え方を変えることで、相手との関係は大きく変わると訴える。
ここで知っておいてほしいのは、相手を変えようとしてもそれは不可能だということ。なぜなら、他人の感情をコントロールすることはできないからだ。
「あなたの感情を誰もコントロールできないように、あなたも、他人の感情をコントロールすることはできません。
コントロールできないものをどうにかしようと思っていると、余計なストレスをあなた自身が抱えてしまうようになってもったいないですよ。相手の感情に振り回されない自分になりましょう」(p106より)
戸田さんは、相談を受けるたびにこんな言葉をかけているという。
どんなに言っても相手は人間である。思い通りになることはそうそうないということだ。
■あなたの中にある他者への期待をなくすことが第一歩
「じゃあ、自分が全部我慢すればいいの?」と思う人もいるだろう。それは間違いだ。我慢はストレスの元である。
解決策は一つ、そもそも期待することをやめて、自分の言いたいことを伝えるということだ。
相手に求めれば求めるほど、思い通りにいかないときのストレスは大きくなる。
大切なことは、あなたが人間関係のストレスから解放されることだ。人と付き合う中で、嫌われたり、好かれたりするのは当たり前。そこで、どう思われるかに捉われ過ぎてコミュニケーションが窮屈になり、人間関係が破綻していくことが問題なのだ。
その上で、自分自身が言いたいことを伝えることが大事だ。
「上司に言っても伝わらない」というのは思い込みであることが多い。何度も同じことをされれば、「この人はこうにちがいない」という色眼鏡がかかってしまう。
その思い込みを一旦外して、言いたいことを話す。もちろん感情的に伝えるのはNG。戸田さんは、本心を言って100パーセント嫌われることはないと述べる。
そして、自分の言いたいことを言うときは、「自分がどうしたいのか」ということをはっきり表明しよう。
「どうして欲しいのか」は相手に対する欲求であり、変化させるのは至難の業だろう。だからこそ、自分が主体性をもって伝えることが相手との関係を良くする大きな一つの手段なのだ。
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仕事は、ほぼ人間関係で成り立っているようなものだ。誰かが誰かを評価し、誰かが誰かの意図を汲んで仕事をする。その関係がギクシャクしているならば、うまくまわるはずがない。
『苦手意識がなくなる会話術』は、アドラー心理学、アンガーマネジメント、アサーティブコミュニケーションという3つの理論・手法を組み合わせて、人間関係でストレスをためている人々への処方箋がつづられている。
コミュニケーションの方法はなかなか変えられるものではないが、一つ一つ意識して変えていくことが大事だ。悩んでいるだけでは、状況は打破できない。自分自身を変える上でも、本書は大いに参考になるはずだ。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。