この記事の筆者は「自分はイケてない」「まったくダメな人間だ」と思ったら、旅行をするなり、普段行かないようなところに行くようにしている。そういうときはだいたい視点が一つに固まってしまっているときで、客観的に自分を見られなくなっているからだ。
では、旅は一体、人生に何をもたらすのか?
その意味でも、取材国は約150カ国、地球を約180周してきたというジャーナリストの兼高かおる氏と作家の曽根綾子氏が旅について語り合った『わたくしたちの旅のかたち』(秀和システム刊)は一つ参考になるだろう。
ほぼ同年代のこの2人は、戦時中の女学校時代の英語の授業で世界に興味を持ち、戦後はそれぞれの才能を活かして活躍してきた。
曽根氏は「若い方には、世界の現状を見てほしい」と語る。
テレビやインターネットを通してではなく、自分の目で見て、感じることが大切だ。実際に行けば、想像以上に疲れるだろうし、もしかしたら気候に振り回されることもあるかもしれない。また、画面を通して見た以上に埃っぽいかもしれない。自分の伝えたいことが伝わらずに呆然とすることもあるだろう。
心に残るのは、苦労をした結果手に入れた景色や交流、理解だ。世界を旅すると、いかに他者を理解するかが大事だと気付く。そうして広げた知見が人間性に幅を持たせるのだ。
■シニア世代におすすめの旅とは?
さて、話は変わって、ここからは若い世代からちょっと遠い話になる。
2人が本書で同じシニア世代におすすめしているのが、クルーズの旅だ。船はエレベーターがあるので階段は使わずに済み、面倒をみてくれるスタッフもいるので高齢の方でも安心して旅ができるという。
至れり尽くせりで、全部お任せでのんびりできるのが、豪華客船の醍醐味だ。
また、いろいろな人間が集まっているのも船旅の楽しみの一つ。曽根氏は「『あの人はどんな人生を送ってきたんだろう…』と妄想するだけで、物語が一本書けてしまいそう。向こうから大人がやってくれば『あっ、長編小説が歩いてきた!』、子どもなら『短編小説が歩いてきた!』と嬉しくなってしまうくらいです(笑)」と、人間観察を楽しんでいると述べている。
少女時代の異国への憧れ、旅先で出会った風景、忘れられない人々、旅を通じて学んだことなどを語り合う一冊。親しく話し合うのは今回が初めてだという2人だが、楽しく読むことができるはずだ。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。