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水野氏は、マイケル・ドイル氏の「法的には独立した周辺政権の対内的・対外的政策に対して、従属的な周辺エリートへの買収や操縦により間接的に支配を及ぼす」存在という定義を引用する。
これはつまり、「帝国」のような明確な統治関係はないが、政策的な観点で影響を及ぼす国境を越えた共同体と言えるだろうか。
そして、アメリカとEUはそれぞれ「非公式の帝国」の性格を持っているという。アメリカは金融・資本を軸に、国境を越えた影響力を市場にもたらしている。一方で、EUはヨーロッパに限定された有限の空間を前提としており、土地に立脚する帝国といえる。
グローバル化はまさにアメリカ型の共同体が進めてきたものだ。しかし、「資本主義の終焉」が示すように、その方法では上手くいかなくなってきているのである。 そこで著者の主張である「閉じてゆく帝国」の全貌が見えてくる。
――もはや、無限の膨張が不可能なことは明らかなのですから、ポスト近代システムは、一定の経済圏で自給体制をつくり、その外に富(資本)や財が出ていかないようにすることが必要です。その条件を満たすには、「閉じてゆく」ことが不可欠になります。(P207より引用)
これはEUという「非公式の帝国」が体現している考え方だろう。
とはいえ、難民問題やテロに見舞われ、南北の経済格差が問題視されているなど、EUにはネガティブな要素が山積みのだ。一方、金融・資本に支えられたアメリカ帝国にぶらさがり続ける日本の行く先も不透明である。
この他にも「海の帝国」と「陸の帝国」という重要な概念が出てくるので、こちらは本書を参考にしてほしい。
『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』は、「歴史の中の現在」という見方で、大きな経済の転換期を切り取った意欲的な一冊だ。
(新刊JP編集部/金井元貴)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。
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