――ベントの開きについて話がありましたが、後ろ姿を自分で見るのは難しいですよね。
石徹白 スーツを買う際に、お店に合わせ鏡があれば自分でも確認することができますが、ない場合は店員さんを上手に頼りましょう。ジャケットのボタンを留めた状態で後ろのベントが開いていないか、店員さんに見てもらってください。
なお、ボタンは二つボタンなら一番上のボタンだけを留めるのが正しい状態です。ボタンは立っていたら留め、座っているときは外して大丈夫です。「どのボタンを留めればいいのか」といった基本的な着方のルールは、本来は家庭科の授業で教えるべきだと思います。
ルールを知らないから、「スーツは細ければ細いほどカッコいい」という間違った思い込みにハマッたり、チャラい先輩の真似をしたり、ごく一部でしか通用しないローカルルールを鵜呑みにしたりしてしまうのです。そのため、印象で損をしている人は非常に多いです。同僚も取引先もみんながチャラい職場であれば超細身のスーツでもいいでしょうが、そんなケースはほぼありません。
スーツを買いに行くときのベストな格好は?
――先ほど「店員を頼る」という話がありましたが、「店員が来ると逃げ出したくなる」という人は少なくないでしょうね。
石徹白 気持ちはわかります。ですが、ユニクロでカジュアルウェアを選ぶときと違って、スーツは自力で選ぶのがとても難しい商品です。売り場に吊るされている状態では、ほとんど違いがわかりませんよね。
スーツのサイズは、店舗によっては「身長170cm、やせ型の人向け」などと表記されていますが、JIS規格でも定められています。たとえば「A-5」の場合は前半の「A」が胸囲とウエスト幅の差であり、差が大きい人、つまりウエストが絞られた逆三角形体型の人の順からY→A→AB→BEになります(※ほかにもサイズあり)。
後半の数値は身長で「5」は「身長170cm」を表し、5cm刻みで変わるため、「4」なら「身長165cm向け」になります。
――それがわかれば、自力でも選べそうな気もしますが。
石徹白 ただ、同じ「A-5」でも、店舗によっていくつかの形やデザインが用意されていることが多いです。その違いは、ハンガーに吊るされた状態で見てもわからないですよ。店で用意している型を知り尽くし、日々接客を通じて研鑽を積んでいる店員さんに自分の好みを伝えて持ってきてもらうのが、楽で失敗しない方法です。
店員さんの接客によって満足度が高く気持ちのいい買い物ができた場合は、今後も「ご指名」するのがいいでしょう。スーツ選びのコツは、プロの力を上手に頼ることです。
しかし、店の中にいるのにスマートフォンで「似合う服の選び方」みたいなライフハック系サイトを必死で見ている人すらいます。目の前の店員さんに聞けば3秒で解決し、さらに自分に合った回答を与えてくれるのに……。
そういったサイトに匿名やハンドルネームで書いている人の素性なんてわかりませんが、目の前の店員さんは服で食べているプロです。目の前の生身のプロよりもスマホの誰が書いたかわからない情報にすがる姿を見ると、情報化社会の暗黒面を感じますね。
『できる男になりたいなら、鏡を見ることから始めなさい。 会話術を磨く前に知っておきたい、ビジネスマンのスーツ術』 「使えそうにないな」という烙印をおされるのも、「なんだかできそうな奴だ」と好印象を与えられるのも、すべてはスーツ次第!