マネジメントをする立場の人間にとって最大の悩み、それは「どうすれば部下やチームの人間が主体性を持って動いてくれるか」という問題だろう。
主体性を持って動くためには「やらされている感」があってはいけない。必要なのは問題解決やプロジェクトに対して、その仕事に関わる人間が、自ら「やりたい」と感じられるようにしていくことだ。しかも、全メンバーがそう思っていなければならない。
そのためには、部下やチームの人間の心に火を点けるプロセスが必要だ。そんな理想的なマネジメントを実現する方法を教えてくれる一冊が、『たった1日でチームを大変革する会議』(永井祐介著、サンマーク出版刊)だ。
本書では、世界のHONDAも採用した問題解決やプロジェクトに関わる人間の意識を180度変える「会議の手法」が紹介されている。重要なのは「会議のプロセスとルール」を変えていくことだ。いくつかのポイントの中から、特に重要なことを取り挙げてみよう。
■チームの意識が変わる会議の「7つのルール」
部下やチームメンバーが主体性を持ち、一人一人が責任感を持って仕事に取り組むための原則は「人は自ら生み出したものに対しては必死になる」という点に集約される。
例えば、子どもが生まれたら誰でも責任感と使命感を持って子育てに励むだろう。仕事も同じで、会議の参加者自らが決め、生み出した目標やコミットした物事であれば、トップダウン的な「やらされている感」なく、主体性を持って行動できるようになるのだ。
この原則に従って、参加する全員が「自分で生み出して方向性を決めた」と実感できるように丸一日、10時間に及ぶ会議を進めていく。そこで重要になるのが「会議におけるルール」だ。
たとえば、問題を見つけたら「指摘」するのではなく「解決策」を言うというルールがある。
一般的な会議では、誰かの主張に対する発言の多くが「それはどうなのかな?」といった“指摘”になりがちだ。そうではなく主張に対する発言はすべて「それはこうしてみたらどうかな」といった“解決策”や“代替案”の提案にするのだ。
こうすることで、時間を浪費するだけの揚げ足取りは避けられるはずだ。
また、組織やプロジェクトが抱える問題点が会議の中で出てきたら、問題点を「どのようにすれば〇〇か?」といった疑問文に変換するというルールもある。
良い人材がいないことが問題であれば、「どのようにすればよい人材が当社に集まるのか」といった具合だ。
人の脳は、疑問文を投げかけられると、その答えを探そうとする習性がある。唯の問題提議ではなく疑問文にすることで、自然と思考回路が問題解決の道筋を探し始めるのだ。
■「言いづらい意見」が言えるようになるマジックフレーズ
会議参加者の主体性を高めるには、参加者が発言しやすい環境を整えることも重要だ。
人間の発言には、「事実、データ、客観情報」と「意見、主張、主観情報」の2種類がある。
特に後者の発言をする場合、多くの人が言いづらさを感じるだろう。そこには「それは違う」と言われてしまうかもしれない、という不安や怖れの感情が付きまとうからだ。