自己啓発書やビジネス書を開いてみると、ときどき「好きな仕事ならば疲れを感じないはず」という言葉を見ます。確かにモチベーションが上がるような仕事では、疲れを全く感じず、いくらでも働き続けられそうな気がしてきますよね。
しかし、「実はそういうときこそ注意したほうがいい」と警鐘を鳴らすのが、精神科医の西多昌規さんです。『休む技術』(大和書房/刊)で西多さんは、疲労を感じないことと、疲労が溜まっていないことは別だと言います。
こんな経験はないでしょうか。それまでバリバリ働いていて、全く疲れも感じていなかったのに、少し気を抜いた瞬間、急に体調が悪くなる。ひどいときは、急に心も体も動かなくなって、ベッドから起き上がれなくなることもあります。
このとき体の中で何が起きているのかというと、これまで快感や興奮で脳が感じにくくなっていた疲労があまりにも溜まりすぎて、それが一気に出てきてしまったのです。
好きな仕事だからといってずっと働いていれば、心身ともに疲労が溜まります。ましてや、睡眠時間を削ってまでそれをしていれば、負荷が大きくなるのは当然のこと。
しかし、脳は興奮していて「まだまだ大丈夫」と思ってしまっているのですから、疲れに気づかないまま、働き続けてしまうのです。
つまり、人は、自分の身体なのにどのくらい疲れているのか分からないものなのです。だから、どんなに仕事が上手くいっていたり、やらなければいけないことがあったとしても、例えば勤務時間がいつもより多くなっていたり、疲れの兆候が見えてきたら、心身を休める必要があります。西多さんは「どのタイミングでどのくらいの休憩を取るか」という判断を下すか、ということが一番重要かも知れないと語ります。
休まなければいけないタイミングのヒントは様々ですが、こんな人たちは疲れを感じにくい(もしくは押し込めてしまう)傾向があるので、自分の体とよく向き合ってください。
■忙しいけれど、成果も上がっているから頑張れている
■自分が休むとほかのひとに悪いと思い、気力で頑張っている
■昼間の業務時間よりも深夜残業中のほうが、仕事に没頭できる
■へとへとな自分も、完全燃焼している気がして嫌いじゃない
ほかに、「週末、ゆっくり過ごしても疲れがとれない」「集中力が落ちてきていると感じる」などのようなことが発生した場合、体の「休んでほしい」というSOSが大きくなっていることが考えられるので、要注意です。
『休む技術』は現代の働き方に一石を投じながら、上手く休んでパフォーマンスを最大限発揮するための方法を教えてくれます。日本ではよく「労働時間の長さ」が重要視され、残業時間が一種の頑張りの指標として捉えられていることもあります。
しかし、実際のところ、頑張り過ぎはパフォーマンスが悪くなると西多さんは指摘します。休むことは悪いことではなく、むしろ必ずすべきこと。エンドレスな忙しさから抜け出したい人にとって、『休む技術』は参考になるはずです。
(文=新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。
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