「目標を見つけなきゃ」「自己実現とは何だろう?」といったことを考え、気づけば何かに急かされるような人生を歩んでいる。息苦しい生き方になってしまっている人は多いのではないだろうか。
そんなとき、そういった多くのことにとらわれず、「人生に目的はない」という考え方をすれば、人生はもっと豊かなものになるのはないか。
そう説いているのが『目的なき人生を生きる』(山内志朗著、KADOKAWA刊)だ。
本書では、「人生に目的はない」と考えた方が豊かな人生を過ごせるという「反倫理」を倫理学者の山内志朗氏が提示する。
「人生に目的はない」というのはどういうことなのか。人生には目的などなく、「幸せに生きる」ために生きるためにあるものだ、という意見の人もいるだろう。
これは一見正しいように思えるが、そもそも「幸せ」が何だか分らないし、それに辿り着く方法と道筋が明確ではない。
著者が考える「目的がない」というのは、目的が隠れたままで、見えてくることも、理解することもないということだ。
人生において、目的は分散し、迷い、見失う者が多くいなければならない。目的が1つしかなかったら、多くの個体をこの世に増殖させる必要はないはずだ。
新しい個体が次々とこの世に現れ出てくるのは、そのことだけで目的が1つしかないことを否定するし、目的がないということを倫理的に含意していると山内氏は指摘する。
人生には答えがあるものだと思ってしまいがちだが、実は「ない」という形式でしか存在し得ない。山内氏は、「多様性ということが唯一の答え」だと述べる。
確かに目的を設定すれば、行動に秩序と合理性が与えられるが、人生においてロードマップはない。これはとても大事なことであり、目的は無数に多様に分散しなければならないから、「無数にあるから決まらない」か「そもそもない」とするしかないのだ。
「目的がない」ということは、欠如や空虚ではなく、むしろ自由な空間であり、器の大きさということでもある。人生や生き方で悩んでいる方は、本書のような「人生に目的はない」という考え方の本を読んでみるのもいいかもしれない。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。