嫌なことや理不尽なことが起こるのも人生だが、どんなときも前向きでありたいもの。そうあるために、作家・ミュージシャンの辻仁成氏が、挫折する度に自身を支えてきたのが「人生の十か条」だ。
『人生の十か条』(中央公論新社刊)は、辻仁成氏がツイッターで配信して反響を呼んでいる「十か条」をベースに、主宰サイトのコラム「人生は後始末」やヨミドクタープラス連載中のエッセイ「太く長く生きる」を合わせ、大幅に加筆編集したものだ。
苦難に出会ったり、壁に突き当たったり、絶望したとき、辻氏は1つの問題に対して10の心構えを考案し、唱えてきたという。
たとえば、本書の冒頭で登場するのが「運気を下げない十の方法」だ。
その一。カッカするべからず
その二。帰る道を変えてみるべし
その三。マンホールの蓋は踏むべからず
その四。呆れるくらいプラス思考で行け
その五。いくつか諦めてみるべし
その六。とりあえず寝るべし
その七。心のこもらないありがとうは言うべからず
その八。少し許してみるべし
その九。自分は運がいい方だと思い込むべし
その十。命を運ぶのが運命。気を運ぶから運気。運ぶべし。
――『人生の十か条』p.14-15より
運気とは、辞書によれは「自然現象に現れる人の運勢」のこと。
悪いことが続けば運気が下がったと思うだろうし、良いことが起き続ければ運気が上がったと感じるものだ。辻氏は「運気」は気の流れであり、気が気を運んできて人の流れを変えていると考えればわかりやすい、と説明する。
そんな辻氏が考える「運気を上げる」一番のコツは「運気を下げないこと」。
「自分は運がない」と口にすると、脳がそれを受け止めてしまい、「運が悪い」が決定してしまう。自ら気を下げてしまっていることになるのだ。なので、そのようなネガティブなことは考えてもいけないし、口にしてもいけないのだ。
逆に言えば、どんな状況でもポジティブな言葉を口にすることを心掛けるようになれば、気の流れは下がらないことになる。
とはいえ、辻氏は「運気なんてない」と思っているという。ではなぜ「運気を上げる」という言葉を口にするのか? それは、負けそうな自分を鼓舞するのにわかりやすいからだ。運気が上がったと思い込んだ自分が、自分を奮発させる。なぜなら、自分を盛り上げるのは、自分自身だからだと考えているからである。
本書ではこの「運気を下げない十の方法」を皮切りに、人生の様々な問題に対する「十か条」を辻氏が書きつづっている。苦境を乗り越えていきたいと思っている人にとっては大いに励ましてもらえる一冊だろう。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。