10年後の世界がどうなっているのか正確にわかる人がいないのと同様に、10年後の自分がどんな仕事をしていて、どのくらい稼いでいるのかを予測するのは難しい。
「強い者が生き残るのではなく、変化に適応した者が生き残る」という言葉があるが、変化の速い今だからこそ、その変化に適応するしなやかさとしたたかさがビジネスパーソンには必要とされる。
では、そのしなやかさやしたたかさは人のどんな部分にあらわれるのか。「10年後食える人」と「10年後食えない人」の行動と考え方の違いを示した『1万2000人を見てわかった! お金に困らない人、困る人』(集英社刊)の著者、松尾昭仁さんにお話を聞いた。
■飲み会の勘定は一目置かれるチャンスである
――この本で松尾さんは様々な切り口で「10年後食える人」「10年後食えない人」の行動や考え方の違いをつづっています。まず目を引くのがお金の使い方で、早いうちから健康に時間とお金を使う人のほうがゆくゆくは「食える人」になりやすいというのは納得できる気がしました。
松尾: かけたお金に対して一番コストパフォーマンスがいいのは「健康」だと思っています。よく医療保険に入って満足してしまって、健康を維持することが疎かになっている人がいるのですが、それで病気になってしまっては意味がない。
もちろん、保険に入ることが悪いというわけではなくて、若いうちから健康に少しのお金と時間を使うことで、歳をとってから得られるものは大きいですよというお話です。健康であれば歳をとってからもなんだかんだ働き口はあって、たとえば警備員をやれば日給1万円くらいは稼げますが、病気で入院でもすればマイナスのキャッシュフローしかないので。
――「車」にお金をかけるか、「歯」にお金をかけるかというのも同様ですね。
松尾: 都内に住む会社員だと、今は車で移動する機会は決して多くないはずです。そうなると人に見せる機会もないからステータスにもならない。一方で歯や顔や太っているか痩せているかといった見た目は一生自分についてまわるものですから、そちらにお金をかけた方が合理的ではないでしょうか。
――「ワリカンにこだわる人はチャンスを逃す」というのも印象的でした。
松尾: 若い社員同士で行くならワリカンでもいいと思いますが、「今日は多めに払うよ」とか「今日はお金持っているから俺が払うよ」といって多めに出せば、仲間内や同僚の中で軽く一目置かれるでしょうね。
難しいのは上司が年下の部下何人かと食事に行った時で、全部おごるのは難しかったら一万円置いて先に帰るっていうのがスマートです。この場合のワリカンは論外ですし、若い部下とあまり長く一緒にいると自分の嫌なところが見えてしまうかもしれません(笑)。ワリカンした場合の倍くらいのお金を払って先に帰るのが一番いい。
誰でも最初はおごられる立場からおごる立場に変わっていくわけですから、お金の払い方は考えた方がいいと思います。
――人間関係についての個所もおもしろかったです。「10年後食べていける人」ほど、人間関係に「心地よさ」よりも「刺激」を求めるというのはまちがいないと思いました。
松尾: 人生を変えたい人も、収入を上げたい人も、今の生活の延長上にいたら大きな変化は望めません。年収300万円の会社で働いていたとして、その会社の部長が500万円しかもらっていなかったら、がんばって出世しても500万円しか稼げないわけで、もっと稼ぎたいなら今のキャリアのレールから外れないといけない。ならば、付き合うべき人は同じくらいの年収の会社の同僚でも、地元の友達でもないはずです。
人間関係も時間やお金の使い方も、「将来なりたい自分」から逆算して決めるべきなのですが、先のことを考えるのはしんどいし疲れるから、「とりあえず目の前のことを一生懸命やる」とか「今付き合っている人と付き合う」という考えになりやすいんです。
――最後に、もっとお金を稼ぎたい人や将来食いっぱぐれることを恐れている人にメッセージをお願いします。
松尾: どうせ努力するなら報われる努力を、というのが一番伝えたいことです。お金は相手の喜びの対価としてもらうものですから、お金をたくさん稼ぐということはたくさん人の役に立つということでもあります。その意味でも、努力がきちんとお金に結びつく努力をしていただきたいと思っています。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。