数十年前と比較とすると、社会や価値観は大きく変わった。例えば、以前と比較すると、正社員が当たり前ではなく、非正規社員の割合も増え、共働きの家庭も増えた。しかし、そうした変化があるにもかかわらず、「お父さんは大黒柱」「お母さんは家事」といった考えが当たり前という世代もある。こうした「ギャップ」の中で、若い世代はこれからどのような人生を送っていけばいいのか。
将来の選択の際に、どんなことに気をつければいいのかを紹介するのが『10代から考える生き方選び』(竹信三恵子著、岩波書店刊)だ。
職業選びだけでなく、どう生きていくのか。本書では、「自分はこんな道を通っていきたい」「通っていくかもしれない」という道筋を8つのコースに分け、そこにどんな障害が待ち受けているか、それを乗り越えるにはどう考え、どんなものを利用すればいいのか、それぞれの選択を生き延びる方法を紹介している。
本書で挙げているコースは、「専業主婦」「大黒柱+亭主関白」「正社員」「非正社員」「共働き」「ひとり親」「シングル」に加えて、どんな選択でも役に立つ考え方・生き方の8つだ。
たとえば、1つの家庭で夫と妻の両方が働く「共働き」。女性も働いて自力で生活していくことが経済的な権利として当たり前になったことや、男性の雇用が不安定化し、男性の収入だけではやっていける家庭が減っていることが背景にある。
この共働きの問題は、そのライフスタイルを、幸せに繋がるものにできるか、負担を増やすもので終わらせるかだと著者はつづる。
では、共働きをプラスにするために大切にすべきことはなにか。以下の4つが挙げられている。
1.女性がその働きを正当に評価され、労働に見合った賃金を受け取れること
2.両立しやすい労働環境を企業が提供すること
3.夫と子どもが、妻が働いていることを評価し、協力的な対応を取ること
4.良質で利用可能は価格の保育園など、地域にこれを支援する仕組みがあって安心して働けること
例えば3つ目の「家族の協力」。家事や育児は、必ずしも「妻」「母親」の務めと決まっているわけではない。家族の誰もが家事スキルを磨き、妻、母親の負担を減らして、ちゃんと働けるようにすることが、「共働き」の必須条件となると著者は述べる。
そのために、家族全員で家事調査をやってみよう。誰がどんな家事をしているのか、一覧表にして、1週間それをつけてみる。多くの家庭の場合、妻、母親への偏りが見られることだろう。次に、調べた家事から夫、父親、子どもたちができるもの、やりたいものを選んで、責任をもって引き受ける。
こうすることで、一人ひとりの分担を増やしていくことで、負担の偏りが減り、共働きにプラスの影響を与えるようになるのだ。
若い世代が、将来をどのように生きるかの選択に迷ったとき、本書は役に立つはず。1つのコースに固執するのではなく、自分の状況や社会の変化に応じて、柔軟にコースを転換していくことも大切なことだ。
将来どんな生き方を選ぶと、どんなことが待ち受けているかを知るためにも、本書を活用してみてはどうだろう。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。