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ビジネスと契約書の、ちょうどいい関係(2)

契約書はトラブル予防・リスク回避に有効~自筆署名、実印じゃなきゃダメ?契印とは?


 では、購入側にとって望ましい条文に変更するとしたら、どうなるでしょうか?

 「本契約に関連して、甲は、債務不履行により乙に生じた通常の損害および当事者の予見していた特別の事情から生じた損害について賠償の義務を負う」

などと、上限は決めずに、むしろ実際の状況に応じて損害が広く認められる余地を残した書き方にしておくことが考えられるでしょう。

 ただ、これだと上限を設定したい相手方が承諾せず「これでは契約に応じられない」という可能性もあります。どちらの契約が正しいかという問題ではなく、交渉によってどこに妥協点を見いだすかの問題なのです。そこで、相手があくまでも「上限」の設定にこだわるなら、せめて

 「…その総額は金100万円を上限とする。ただし、甲の故意または過失に基づく場合や、甲が本契約に定める守秘義務に違反したことに起因する損害はこの限りでない」

と付け足して、例外を設けることで落とし所をつくるのもいいでしょう。このように、ビジネスである以上、契約も自由な交渉の結果を反映するものですし、そうすることで取引関係をより長く続けることが、当事者双方のメリットにつながるといえるでしょう。
(文=竹永大/行政書士)

●プロフィール
1973年東京生まれ。行政書士。経済産業省後援ドリームゲートアドバイザー。契約書の基本セミナー講師。平成15年、竹永行政書士事務所を設立。契約書専門の行政書士として、下町の工務店から、大手企業まで幅広いクライアントを持ち、あらゆる業界の契約実務をアドバイスし続ける。ホームページで、失敗しない契約書のテクニックや書式を無料公開中。著書に『わかる!使える!契約書の基本』(PHPビジネス新書)、『契約書の読み方・作り方』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

BusinessJournal編集部

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