人の話を聴いているつもりでも、実はしっかりと聴けていないことは多い。良い人間関係を築くためには、相手が伝えたいことを正確に理解し、相手の気持ちまでくむことが大切。そのために必要なのが「傾聴」だ。部下とのコミュニケーションや家族との会話など、傾聴の大切さはここ数年でよく知られるようになっている。
ただ「話を聞く」とは違う「傾聴」の本質
『プロカウンセラーがやさしく教える 人間関係に役立つ傾聴』(古宮昇著、清流出版刊)では、心理学博士であり、プロカウンセラーとして日本、アメリカ、ニュージーランドで30年近くにわたり多くの人々の話を聴き、悩みに向き合い、解決をサポートしてきた古宮昇氏が、傾聴の基本をはじめ、仕事、夫婦、親子、初対面の関係などの対話の場面での具体的な傾聴のコツを会話例とともに紹介する。
傾聴とは、相手を尊重するという基盤の上に、なるべく相手の身になって共感的に理解し、その理解を言葉で返しながら行う対話のこと。では、具体的にどのように傾聴すればいいのか。
まず大切なことは、大きくたくさんうなずくこと。話し手に体を向け、話し手をみながら「うん、うん」「あぁ、そうか」「ほう、ほう」のように声に出しながら大きくたくさんうなずく。それによって、「あなたの話を聴きたいです」「あなたの話は私にとって大切です」といったメッセージが伝わる。
うなずくことに加え、話し手の言った大切なキーワードを短く繰り返すと、話し手は「私の言っていることを分かってくれている」と感じることができ、より話しやすくなる。
また、話し手の話に応えるなかで、質問を上手に使うと話し手は話しやすくなる。ただし、根掘り葉掘り質問されるのは嫌なもの。上手な質問のコツは、話し手の流れに沿った質問をすることだ。
社交的な場での会話なら質問を多用すると「私はあなたの話に興味があります。もっと聞きたいです」というメッセージが伝わる。一方、話し手が辛い悩みごとの話をしているときは、質問を減らして話し手の話す内容を繰り返す応答をするほうが安全。辛い内容ほど相手は傷つきやすい。詮索されることなく自分のペースで話せることが大切だからだ。
傾聴の本質は、話し手に関心を持ち、そのままの話し手を大切に感じ、尊重し、話し手の思いを自分のことのように共感的に理解すること。本書からそのコツと本質を学び、日頃のコミュニケーションに活かしてみてはどうだろう。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。