『The Expert(Short Comedy Sketch)』(無料動画サイト「YouTube」より)
とあるオフィスのミーティングルーム。発注元とおぼしき顧客企業の社員(女性)2人と、業務を請け負う業者側の男性3人のやりとりを収めた、『The Expert(Short Comedy Sketch)』という動画が一部で話題を呼んでいる。
新しい戦略で実績を上げるためにプロジェクトを立ち上げたという顧客が、依頼内容として提示したのは「7本の赤い線をすべて直角に交わらせてほしい」というもの。これだけでもすでに不可能なのは明白なのだが、業者側のプロダクトマネージャーは「もちろんです」と即答で引き受ける。続けて「うちの技術者は赤い線にかけては誰にもひけをとらない」と豪語し、同席する業者側の技術者2人は驚きながらもためらいがちにうなずく。
その後もミーティングは次第に熱を帯びていくが、何しろクライアントから飛び出すのは、赤い線の何本かは緑色と透明なインクで」とか、「引っ張った線のうち1本を子猫の形にできないか」、挙げ句の果てには「その中に赤いバルーンを組み込んで」など無理な要求ばかりな上に、プロダクトマネージャーたちは相槌しか打たず、技術者がホワイトボードに線を引いて実現不可能なことを説明し、反論に転じようとすれば「君は専門家だろ?」の一言で片付けられてしまう。
最終的には追い詰められた技術者を尻目に、顧客企業の2名のクライアントとプロダクトマネージャーらは「生産的な話し合いだった」と、満足げな表情でその場を後にするのだが、そこへ顧客企業の1人でデザインスペシャリストの女性が戻ってきて、「赤いバルーンを子猫の形にすることは可能か」と、とどめともいえる質問を投げかける。すると、技術者はきっぱり答えるのだ。「もちろん可能ですよ。僕は専門家なのですから、どんなことでもできます」と。
この場面で動画は終わるのだが、4月7日付ニュースサイト「ねとらぼ」記事によると、この動画は脚本家のLauris Beinerts氏が手がけたもで、同氏は「エンジニアが企業において普段どのような苦労をしているかを『7本の赤い線をめぐる奇妙な会議』を例に描いた」と説明しているという。
この動画に対する感想の中には「笑えない」という声も少なからずあるようで、技術者の人々にとっては、決して笑い事で済まされる話ではないのだろう。
(文=成田男/フリーライター)