どんな種類であれ、ビジネスに関わっているならば、「ファン」の大切さは嫌というほどわかっているはず。なぜなら、彼らは定期的に繰り返しお金を使ってくれ、その売上がビジネスに安定をもたらすからです。
だからこそ、あらゆるお店や会社は「一見さん」を囲い込んで、何とか「ファン」に育てようと、あの手この手を駆使します。
しかし、この方法は本当に正しいのでしょうか?
『リピート率90%超! 小さなお店ひとり勝ちの秘密』(クロスメディア・パブリッシング/刊)の著者で、美容・飲食の分野で数々の成功実績を持つ中谷嘉孝さんは、“「ファン」=育てるもの”というビジネスの常識にまっこうから異議を唱えます。
■作るべきは「ファン」ではなく「サポーター」
中谷さんは、「何を求めているのかわからない新規客」を集客して、長い時間かけてファンに育てるという既存のマーケティングは、あまりにもしんどい「イバラの道」だとしています。常に背伸びをして気を惹き続けなければいけませんし、一度期待を裏切ってしまっただけで、彼らは離れていってしまうからです。
その代わり、「ファン」ではなく「サポーター」、つまりお金を使ってくれるだけでなく、自分の提供する商品やサービスを心から喜んでくれ、売り手と客という関係を超えて一生付き合える顧客を集めるべきだと中谷さんはいいます。ただ、この「サポーター」は育てようとして育てられるものではありません。その資質を持った人を探すのです。
■何があっても離れない「サポーター」の作り方
では、「サポーター」になる資質のある人をどのように探せばいいのでしょうか。
まず中谷さんが挙げているのが、意図的に「間口を狭めること」。一人でも多くの顧客をつかみたいあまり、つい間口を広げて万人に合わせてしまうのは、ビジネスに関わる人の本能だともいえますが、これでは客層が雑多になりすぎてしまい、固定客はつきにくいのです。
間口を狭めるために有効なのが、「自分のビジネスのいい面だけでなく、悪い面も客に伝えてしまうこと」です。
たとえば、中谷さんが経営する会員制サロンでは、新規のお客さんでも優遇せず、一ヶ月以上先まで予約が埋まっていることを伝えるといいます。それでもいいという人は、それだけの価値を中谷さんのお店に置いているということ。来店した時に充分なサービスを提供できれば、こういう人がやがてリピーターになり、サポーターになっていくというのは想像に難くないところです。
店の敷居が低くなれば低くなるほど、客層は多様になります。一時の誘惑に負けず、あえて敷居を高く設けて「客を選ぶ」ことで、結果的にリピーターが増えて安定的に売上をあげられるようになるというのは、中谷さんがこれまでのビジネスを通してつかみとった一つの真実なのです。