孤独を恐れている。孤独は寂しいもの。「孤独」という言葉にはマイナスなイメージがあるのが一般的だ。しかし、孤独は悪いものなのだろうか。
『孤独の価値』(森博嗣/著、幻冬舎/刊)は、人間を苛む得体の知れない孤独感を、少しでも和らげるための画期的な人生論を紹介する一冊だ。
孤独は人間にとって実に大切で、価値のある状態だと著者の森博嗣氏は考えているという。これは、数ある欲求に対する本能的なもの、動物的なものではなく、人間にだけある高尚な感覚。孤独を知らなくても生きていけるが、それは動物的に生きているだけ。人間として生きていることにはならない、と極言することも可能だ。それくらい、人間らしい、人間だけの特権といえるものなのだ。
そんな大事な孤独を拒絶し、忌み嫌うのは、人間性を放棄するような姿勢といえると、森氏は述べる。
現代人は、あまりにも人とつながることに必死だ。これは、つながることを売り物にする商売にのせられている結果といえる。
森氏は、金を払ってつながるのは、金を払って食べ続けるのと同じ。空腹は異常であって、食べ続けなければならないと思い込まされているようなものとした上で、現代人は「絆の肥満」になっているといっても良いとつづる。
そして、つながりすぎの肥満が、身動きのできない思考や行動の原因になっていることに気づくべきだとし、ときどきは、断食でもしてダイエットした方が健康にも良いと警鐘を鳴らす。ときどき、孤独になった方が健康的で、思考や行動も軽やかになるのだ。
楽しさに飢えた状態が「孤独」なのだから、そこから「楽しさ」を求める生産的で上向きな力が湧き上がってくるのも、自然の摂理だといえる。
本書の中での「孤独」というのは、社会を拒絶することでも、他者を無視することでもない。社会における最低限の関係は拒絶できないものだという前提にある。
多くの友達に囲まれているときに孤独を感じる人もいれば、友達がいなくて孤独を感じる人もいる。いつか来る死を恐れ、孤独を感じることもあるかもしれない。人それぞれだが、孤独は駄目だというイメージは強い。けれど、孤独は絶対駄目な状態だと決めつけず、違った見方ができるということを本書から読み取ることができるはずだ。
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。