早熟型は、目標が見えているわけですから、目標達成のために学生時代も一定の自己投資を行っていて、卒業と同時にすでに一定の即戦力性を持っています。職種内容で絞って就職活動を行い、複数社から内定を得られたり、20代で起業するタイプはこちらです。
一方、晩成型はぼんやりした学生時代を過ごし、大企業や官庁にポテンシャル採用されるタイプが典型で、こちらのほうが圧倒的に多数派です。大企業や官庁がおかしな採用を行ってきた結果、こういうタイプが主流になったともいえるでしょう。
筆者の見たところ、どうやら中学時代をどのように過ごしたかで、どちらのタイプになるか決まるように見えます。中学時代は高校生活に大きな影響を与えますし、その後の大学受験でがんばりすぎると、ほぼ例外なくぼんやり型になるようです。逆に大学付属の高校に入学して内部進学した人材の中に、強烈な目的意識を持った人材が散見されるように思います。
「自分はこれから何をやればいいのか?」という疑問を抱いた時点で、自分は早熟型ではなく、晩成型の人材だと考えたほうがいいでしょう。どちらが良い悪いではなく、そういうものだと割り切ってください。
さて、世の中の各分野では目立った活躍をする人たちがいて、さまざまな情報発信をしています。そのように目立つ人の多くは、早期に目標を持って自立した早熟型であり、彼らの経験に基づくアドバイスを発信しています。「後先考えずに、とりあえずやってみろ」「就職するなんてもったいない」「迷わず行けよ、行けばわかるさ」といったものです。それらは間違いなく真実のメッセージなのですが、同時にそれは早熟型の人材以外にはあまり参考にならないのです。
では、晩成型の人材は、どうキャリアを考えればいいのでしょうか。それが、筆者の唱えるキャリアデザインであり、明確な目的が見え、かつそのためのスキルが身に付くまで5年でも10年でも組織で働くというものです。『35歳までに読むキャリア(しごとえらび)の教科書』(渡邉正裕/ちくま新書)をはじめ、同様の提言をされている方が多く見受けられます。
●メリットとデメリットを見極めたキャリアパスを
筆者は「普通の人は、最初に既存の組織に入って一定期間の修業後に転職するなり独立するなりしたほうがいい」と提唱していますが、それには合理的な理由があります。ここでは、一般的な終身雇用・年功序列の日本企業のキャリアパス(職務経歴)を職能型キャリアパス、新興企業や外資系企業のそれを職務型キャリアパスとし、それぞれのメリットとデメリットを提示してみましょう。